フォートマイヤーズ(フロリダ州)―レッドソックスの新エース、ギャレット・クロシェが、スプリングトレーニングでの3度目の先発に臨み、圧巻の投球を披露した。ジェットブルー・パークのスコアボードには、101マイルの球速が複数回表示されるほどだった。
ボストンの春季キャンプの本拠地にはStatcast(スタットキャスト)は導入されていないが、球団は独自のTrackMan(トラックマン)システムを使用して球速を測定している。水曜日のレイズ戦(4-2で勝利)では、レーダーガンの数値がやや不安定だったものの、クロシェ自身はグレープフルーツリーグでのこれまでの登板の中で最も手応えを感じた試合となった。
「あれは誤測定だと思います。確かに調子は良く、しっかり腕も振れていたとは思いますが、そこまでの球速が出ていたとは考えにくいですね。」
とクロシェは語った。昨シーズンはトリプル・ディジット(100マイル以上)を記録した球が、わずか4球しかなかったため、この日表示された球速には少し疑問を感じたようだ。
2024年にホワイトソックスでオールスターに選出され、大ブレイクを果たしたクロシェは、ボストンのキャンプで自身の実力を証明する必要はない。 しかし、これまでの2試合で5つのアウトしか取れなかったことには、不満を感じていた。
その競争心の強さは、この日の3イニング(44球)の投球内容を振り返る際にも表れていた。
- 被安打:2
- 無失点
- 与四球:1
- 奪三振:7
試合後、記者からの質問に対し、クロシェは自らの投球に対するこだわりを見せた。
「今はかなり良くなっています。」とクロシェは語った。
レッドソックスにとっても、今シーズンの開幕を迎えるにあたり、昨年よりもはるかに良い状態であることは間違いない。なぜなら、ローテーションの先頭を任せられるエース級の投手を手に入れたからだ。
「彼は自分の技術をしっかり理解している、非常に力強い投手だ。」
とレッドソックスのアレックス・コーラ監督は語った。
「彼はピッチングコーチ陣とともに、さらに成長しようと努力している。昨年は彼にとって、メジャーの先発投手としての感覚をつかむ一年だった。そして今、彼は30試合に先発し、チームを勝利に導くことに強い意欲を持っている。」
クロシェは、2023年12月のトレードでボストンに移籍した時点で、すでに成功する準備が整っていた投手だった。 しかし、新天地での指導のもと、ある1つの調整を加えたという。
「今日は数球“ジャイロ(Gyro)”を投げましたが、感触は良かったですね。」 とクロシェは語った。
「ジャイロ?」
クロシェの言う「ジャイロ」は、かつて松坂大輔が日本で投げていたジャイロボールとは別物だ。松坂はメジャー移籍後、この球種を投げることができなかったが、クロシェのジャイロはレッドソックスの投手コーチ、アンドリュー・ベイリーが定義する「鋭く沈み込むスライダー」を指している。
「そうですね、より縦に落ちる球です。」とクロシェは説明する。
「カッターには横の動きがあるけど、ジャイロはカッターとほぼ同じ球速で、より縦に沈む。つまり、普通のスライダーですね。スウィーパーとは違うから区別しやすいようにジャイロと呼んでいるだけです。」
クロシェのレッドソックスへの適応は極めてスムーズに進んでいる。彼自身も、それを実感したのは1月の「フェンウェイ・フェスト」イベントに参加したときだったと語っている。
「すぐに、ここが自分の居場所だと感じました。」とクロシェは語った。
「チーム全体の雰囲気がすごくいいですね。チームメート同士の関係も良好で、打者と投手の間のコミュニケーションも活発ですし、みんながうまく溶け込んでいます。シーズン前のこの時期に、ここまで一体感があるのは珍しいと思います。通常は、ポジションごとにまとまることが多いですが、今のところはその垣根を越えて、いい交流ができています。」
レッドソックスにとって、クロシェがチームにとって重要な存在であることは明らかであり、球団は彼が快適に過ごせるよう、あらゆるサポートを行っている。
さらに、クロシェは2026年シーズン終了後にFA(フリーエージェント)となる予定であり、レッドソックスは彼との契約延長を目指している。 そのため、チームは彼が環境にしっかり適応できるよう気を配っている。
「今日、彼に『試合前の準備に必要なものは全部揃っているか?』と聞きました。」
とコーラ監督は明かす。
「彼は『はい、すごくいい感じです』と言っていました。スカウティングレポートや分析の面でも、ピッチング部門と良い会話ができているようです。今のところ、順調ですね。」
昨年、若いホワイトソックスのチームにいたクロシェにはなかったものが、今年のレッドソックスにはある。それは、経験豊富なメンターの存在だ。
その名前は、ウォーカー・ビューラーとルーカス・ジオリト。
「とてもいい環境ですね。僕は左投手なので彼らとはタイプが違いますが、それでもウォーカーが話す配球(シーケンシング)についての考え方を聞くのは非常に勉強になります。」
とクロシェは語った。
「僕のデータを見れば分かるように、『技巧派のパワーピッチャー』を自称するのは矛盾しているかもしれません。でも、どうにかして両立できる方法があるかもしれない。ウォーカーから配球の考え方を学ぶことは、今のところすごく有益ですね。」
イアン・ブラウン:MLB.comレッドソックス担当
引用元:mlb.com