ロサンゼルス発 ーー ドジャースが本拠地でのシーズン開幕戦を迎える数日前、ムーキー・ベッツは万全な状態ではなかった。チームのカクタスリーグ最終戦の前に体調を崩し、正体不明の病により東京シリーズを欠場。わずか2週間ほどで体重は175ポンド(約79kg)から157ポンド(約71kg)まで落ちていた。
日本から早期帰国した後、体調そのものは回復してきたが、固形物を摂ると嘔吐してしまい、まともに食事が取れなかった。先週日曜のエンゼルスとのエキシビションゲームも直前で欠場となり、レギュラーシーズン本格再開に間に合うかは不透明な状況だった。
もちろん、ドジャースはベッツの底力を知っていたが、それでも彼が本来のパフォーマンスを発揮できるかどうかには不安があった。しかしベッツは体調の転機を迎え、食事を問題なく摂れるようになると、急速に体重も戻していった。そして本拠地開幕シリーズに間に合わせただけでなく、いつものような頼れる姿を見せ始めている。
金曜の試合では、ベッツが2本の勝ち越しホームランを放ち、延長10回に飛び出したスリーランでタイガースを8対5で下す劇的なサヨナラ勝ちを演出した。リング授与式の夜に、ファンとチームに歓喜をもたらしたベッツは、エリアス・スポーツ・ビューローによると、1961年のエクスパンション以降のMLBで「8回以降に複数の勝ち越し本塁打を記録した7人目の選手」となった。
Multiple go-ahead HR in 8th inning or later, incl walk-off HR, expansion era (1961):
— Sarah Langs (@SlangsOnSports) March 29, 2025
Tonight Mookie Betts
8/2/2015 Andre Ethier
4/7/2008 Torii Hunter
4/19/2003 Brian Schneider
4/15/2001 Todd Hollandsworth
5/28/1979 George Brett
9/22/1967 Jerry Buchek
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ベッツにとって、2024年のワールドシリーズ優勝を記念してチームがリングを受け取った夜に勝利へ導いたことは、特別な意味を持つというよりも「ただ試合に勝っただけ」といった感覚だった。感情に大きく流されるタイプではない彼にとって、そうしたセレモニー自体がモチベーションになるわけではない。
しかし、この2本塁打の夜は、彼自身にとっては大きな意味を持つ出来事だった。
「本当に特別な夜だったよ。自分勝手に聞こえるかもしれないけど、どちらかというと“自分のために”特別だったんだ」とベッツは語った。「体重が落ちてる状態でプレーするのが大したことってわけじゃないけど、そういう状況で出場して結果を出せたことに、自分自身すごく誇りを感じてるんだ。
『でも、本当に大変だったんだ。病気で辛くて泣いた夜もあったし、その隣で妻が支えてくれてた。そういう経験があって、あの感情があふれたんだ。もちろん、“チームのために勝つ”っていうのもあるけどね。そこが他の部分の感情なんだよ。」
ベッツの最初の大きな一撃は、8回に放った勝ち越しのソロ本塁打だった。フレディ・フリーマンがかつてのチームメート、ジャック・フラハティから同点の2ランを放ってドジャースが試合を振り出しに戻した2イニング後のことだった。この一発で逆転劇が完成したかに思えた。
しかしタイガースは9回にタナー・スコットから同点に追いつき、延長10回には2点を勝ち越した。ドジャースには再び巻き返しが求められたが、それに時間はかからなかった。マイケル・コンフォートと、30歳の誕生日に代打出場したウィル・スミスのタイムリーヒットで、すぐさま同点に追いついた。
そして、ムーキー・ベッツが魔法をかける舞台が整った。
「正直、まったく予想してなかったよ」とデーブ・ロバーツ監督。「彼は本当に特別なことをやってのける。」
「彼はスーパーヒューマンだよ」と三塁手マックス・マンシー。「あの最初のホームランは、今の彼が持ってる唯一の“バルク(体重)”から絞り出した一発だって冗談を言ってたんだけど、さらに上をいかれたね。僕たち、完全に間違ってたよ。」
エリアス・スポーツ・ビューローによると、ドジャースはシーズン開幕から4勝0敗以上でスタートした史上9番目の前年度ワールドシリーズ王者となった。直近では1985年のタイガースが同様の快進撃を見せ、開幕6連勝を飾ったが、最終的にはポストシーズン進出を逃している。
王者としての連覇への道のりは、ドジャースのレギュラーシーズン序盤の試合だけで決まるわけではない。しかし、開幕から4戦無敗を維持する中で、すでに粘り強さを見せている。東京での試合ではフリーマンとベッツを欠く不完全なラインアップで戦い、ベッツ自身も病気から完全な状態へと戻す途中の段階だ。
現在、ベッツの体重はおよそ165ポンド。理想の状態にはまだ届いていないものの、つい最近までの状態と比べれば格段に良くなっている。金曜のパフォーマンスが示す通り、ベストな体調でなくとも、十分に打撃でインパクトを与える力は健在だ。
「筋力はあまり落ちていないよ。体重に対しては、今でもかなり力があると思う」とベッツは語った。「でも、体重が増えればそのぶんパワーも増す。今はただ、“160ポンドのホームラン”を楽しんでるだけさ」
ソニア・チェン:MLB.comドジャース担当
引用元:mlb.com