春季キャンプで披露したスイッチピッチャー・サインチェ

MLB ジェランジェロ・サインチェ マリナーズ

GOODYEAR(アリゾナ州)— ジュランジェロ・サインチェは、ビジターチームのブルペンから登場するとき、打席で待っている相手が誰なのかを知っていた。

マリナーズのスイッチピッチャーである彼は、ガーディアンズの内野手トラビス・バザーナと最近、カードのサイン会で顔を合わせていた。その際、二人は「すぐに対戦することになるね」と冗談交じりに話しており、それが実際に実現したのが、グッドイヤー・ボールパークで行われたMLBスプリング・ブレイクアウトの舞台だった。


昨年のMLBドラフト1巡目で指名されて以来、サインチェにとって初の本格的な試合形式での登板。彼は、左腕ブランドン・ガルシアの後を受けて登板することは分かっていたが、バザーナと対戦することになるとは予想していなかった。バザーナはサインチェより14位早い全体1位指名を受け、2番打者として出場していた。

野球では、時に星がきれいに並ぶように巡り合わせが起こる。

サインチェは、ブルペンで左右両腕で投球練習を行っていた。そして、5回のマウンドに上がると、まずは左腕でバザーナとの対決に臨み、初球でショートのブロック・ロデンへの鋭いゴロを打たせてアウトを奪った。その後、グラブを持ち替え、残りの打者には右腕で投げ続けた——相手が左打者であっても、右腕での投球を選択した。

「ものすごいアドレナリンが出ていた」と、MLBパイプラインのランキングでマリナーズの9位プロスペクトにランクされているサインチェは語った。「体のコントロールができないほどだったけど、何とか乗り切ったよ。」


運命は再びバザーナを打席へと導き、サインチェのこの日最後の対戦はさらに興味深いものとなった。

サインチェは、前回と同じようにバザーナに対して左腕で投げるかのようにグラブを外したが、周囲を驚かせるようにそのまま右腕で投げ続けた。そして、97マイルの高めのフォーシーム・ファストボールを投じ、バザーナを空振り三振に仕留め、この日の登板を締めくくった。

「これは特別なことだ」と、クリーブランドのNo.1プロスペクトであり、MLB全体でNo.10プロスペクトにランクされているバザーナは語った。「こんな投手はまず見ないよ。彼には明るい未来があると思うし、彼と対戦できたのはすごく面白かったよ。」

つまり、サインチェのこの試合での最初の投球が、左腕での最後の投球にもなった。バザーナが初球をスイングして打球を放ったため、それ以降の39球はすべて右腕で投げられた。サインチェは2イニングを投げ、2安打2四球2奪三振で1失点(自責点0)という内容だった。

「すでにリズムに乗っていたから、『このまま右腕で投げ続けよう』と思ったんだ」とサインチェは語った。

その投球にはチームメートも驚きを隠せなかった。

「マジで、やばいって」と語ったのは、マリナーズのNo.12プロスペクトであり、この試合で3打数3安打、422フィートの本塁打、さらに盗塁を記録したタイ・ピート。「彼がマウンドで腕を切り替えた瞬間、みんなが歓声を上げたのが面白かったよ。」


金曜日の試合でサインチェが右腕と左腕を使い分けた判断は、マリナーズが今後彼の両投げのスキルをどのように活用していくかを示唆するものだった。

シアトルはサインチェを右投げの先発投手として育成する方針だ。右腕の方が球種が多く、フォーシームの球速も高いほか、スライダー、カッター、チェンジアップといった球種を駆使できるためだ。しかし、左腕での投球にもプラスの可能性があり、最速93マイルのシンカーとスライダーのコンビネーションが武器になるため、その能力を完全に捨てることは考えていない。

「起用法はマッチアップ(対戦打者)よりも育成を重視したものになる」と、マリナーズのゼネラルマネージャー、ジャスティン・ホランダーは語った。「もちろん、彼を成功しやすい状況に置きたいし、右打者に対して左で多く投げさせるのは避けたい。ただ、プラトーン対策のためにも、右腕での投球をしっかり育成する必要があると考えている。すべての左打者に対して左で投げる、というわけにはいかない。」


サインチェの投球ルーチンには流動性があると予想される。

現時点での計画では、彼は右投げで先発し、その試合の中で左対左の場面で左投げを使うこともあるが、毎回そうするわけではない。そして、登板間の調整セッション(通常3日後)では右投げで行い、その日の試合で左投げで1イニング救援登板する形を取る予定だ。

「これはまだ確立されたプランではありません」と、ホランダーGMは語った。「正直に言うと、私たちがこの答えを完全に知っているとは言えませんし、自信満々に『これが正解だ』と話すつもりもありません。今後も状況に応じて調整が必要になるでしょう。」


マリナーズは、サインチェがシーズンをスタートするマイナーリーグの所属先についてある程度決めているが、まだ本人には伝えていない。彼自身の目標は、シーズン終了までにダブルAアーカンソーに到達することだ。

今後も学ぶべきことは多いだろうが、彼の魅力的なメジャーへの道のりは、金曜夜の「ブレイクアウト」な活躍から本格的に始まった。

ダニエル・クレイマー:MLB.comマリナーズ担当
引用元:mlb.com

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