シカゴ発――カブスのユーティリティ選手ビダル・ブルーハンがホームプレートに滑り込んだその瞬間、ピート・クロウ=アームストロングはすでに三塁ラインを越え、ダイヤモンドを駆け抜けていました。イアン・ハップは一塁を回って立ち止まり、両腕を天に突き上げてダグアウトの方を振り返り、その直後、クロウ=アームストロングが到着し、歓喜のセレブレーションが始まりました。
「信じられなかったよ」とハップは語りました。「振り返ったら、もう彼がそこにいたんだ。ブルーハンより速く走ってたんじゃないかって思ったくらいだよ。」
ハップの延長10回サヨナラタイムリーは、リグレー・フィールドでのドジャースとの乱打戦を締めくくる、感嘆符のような一撃となりました。打った直後にヘルメットを空高く投げ上げたハップに、クロウ=アームストロングが飛びつき、抱き合うふたりはすぐにチームメイトたちの祝福の輪に飲み込まれていきました。
カブスにとって、今シーズンはまだ25試合しか消化していませんが、すでにこの「ジェットコースターのような勝利」がチームの“お家芸”になりつつあります。
つい先週の金曜日には、ダイヤモンドバックスとの激戦を13対11の逆転勝利で制し、リグレー・フィールドを揺らしました。その試合も、今回の火曜日のゲームと同様に、試合の流れを断ち切るような痛恨の場面――普通なら士気が下がり、流れが崩れかねない局面――が幾度も訪れました。
しかしカブスは、そのたびに粘り強く、諦めることなく、最終的には歓喜の瞬間をつかんできました。今季の彼らは、「一筋縄ではいかないが、最後まで諦めない」チームであることを証明し続けています。
4年連続でポストシーズン進出を逃しているカブスですが、今季のチームはその流れを断ち切るべく、序盤戦から「粘り強さ」という強みを存分に発揮しています。
「うちのチームは、絶対にあきらめない」と語るのは、カブスの捕手ミゲル・アマヤ。
「相手が5点取っても、こっちは1イニングずつ確実に1点を取り返すつもりでいる。ここでは、とにかく1球1球に全力で向かっていくというマインドが根づいているんだ。それが今の僕たちを支えていると思うよ。」
考えてみてください――9回裏二死、ドジャースが10対9でリードし、クローザーのタナー・スコットがマウンドに立っていた時点で、ドジャースの勝利確率は96%でした。
しかしその直後、スコットが投じたど真ん中への97.3マイル(約156.5キロ)の速球を、ミゲル・アマヤが見逃しませんでした。カウント0-1からのその一球を、左中間スタンドへ高々と打ち上げたのです。
打った瞬間、アマヤは手応えから「これはいった」と思ったそうですが、センターのトミー・エドマンが警告ゾーンでスピードを緩め、キャッチ体勢に入るのを見て一瞬ひやりとしたとのこと。そのためアマヤは一塁へ向かう足をさらに速め、ベンチのチームメイトたちは固唾をのんで打球の行方を見守り、リグレー・フィールドの観客も息を呑む瞬間となりました。
「ただただ……待つしかなかった」とイアン・ハップは語りました。「ずっと待って、待って、待って……」
その打球が、リグレー・フィールド名物の外野フェンス上の“バスケット”に吸い込まれるように落ちた瞬間、老舗球場は揺れるほどの歓声に包まれました。試合は10対10の同点に追いつき、延長戦へ突入。
スタットキャストによると、アマヤの打ったその打球が本塁打になるのは、メジャー全30球場のうちリグレー・フィールドだけだったそうです。
「バスケット弾、最高だね」とアマヤは満面の笑みで語りました。
アマヤは、あの瞬間にスタンドから湧き上がったエネルギーが、自分の背中を強く押してくれたと語ります。
「僕はまだポストシーズンの経験がないんだけど」とアマヤ。「でも、プレーオフを経験しているチームメイトたちは、“あの雰囲気はまるでプレーオフみたいだった”って言ってたよ。」
アマヤの同点弾が飛び出す1イニング前、カブスの右翼手カイル・タッカーがドジャースのアレックス・ベシアから2ランホームランを放ち、点差を10対9に縮めていました。
この一打が、6回と7回にドジャースが一挙6得点を挙げて試合をひっくり返したあとの展開でも、カブスが粘り強く食らいついていく流れをつなぐ大きな一歩となりました。
ドジャースが6回と7回に見せた猛攻は、実質的にカブスの最初の逆転劇を帳消しにする形となりました。試合序盤、ドジャースが初回に3点を先制しましたが、カブスはその裏にドジャース先発ダスティン・メイを相手に5点を奪って即座に逆転。試合は最初から激しい展開となりました。
さらに5回には、ピート・クロウ=アームストロングが2ランホームランを放ち、この日の“サイクル安打まであと三塁打”という大活躍に彩りを加えます。6回の時点で、カブスの勝利確率は90%にまで上昇していました。
試合の流れは一時的にドジャース側へ大きく傾きましたが、今のカブスには「次の逆転劇はすぐそこにある」という期待感が常に漂っています。
「こういう勝ち方は、チームにとって大きな自信になる」と語ったのは、先発して5回2/3を投げ、5失点(自責点2)を記録した左腕・今永昇太。通訳のエドウィン・スタンベリー氏を通じてこう話しました。
「こういう試合を僕たちはすでに何度も勝ってきている。だから今後またビハインドの展開になったときでも、ベンチでは『またこの状況だ。大丈夫、俺たちはやれる』って、自然と思えるはずだよ。」
カブスのクレイグ・カウンセル監督も、今永の言葉に同調しました。
「シーズン序盤でこういう勝ち方ができるのは、シーズン全体にとって大きな勢いになる」とカウンセル監督は語りました。「本当に素晴らしいチームを相手に、うちの選手たちは見事な戦いぶりを見せてくれたよ。」
カウンセル監督は、延長戦を含む8回から10回までを無失点で抑えたリリーバー、ギャビン・ホロウェルとポーター・ホッジの3イニングの継投を特に称賛しました。こうした「目立たないけど大事な仕事」が、いわゆる“マジック”を生み出す土台になるのだと監督は強調します。
その“マジック”は、カイル・タッカーの2ラン、ミゲル・アマヤの2アウトからの同点弾、そしてイアン・ハップの初球サヨナラタイムリーという形で、見事に現実のものとなりました。
「このチームの試合は本当に見ていて楽しいよ」とカウンセル監督は語りました。「私から言いたいのはこれだけだ――“球場に来て、このチームのプレーを見てほしい”。このホームスタンドでは、本当に素晴らしいこと、そして何よりも“粘り強いプレー”をたくさん見せてくれている。」
ジョーダン・バスティアン:MLB.comカブス担当
引用元:mlb.com