“彼は野獣だ” ソト メッツで1号ホームランを放つ

MLB メッツ フアン・ソト

ヒューストン — フェンスを越えていく打球から、フアン・ソトは一瞬たりとも目を離さなかった。その視線はボールを追い続け、打球が空高く舞い上がるのを見届けながら、彼は一塁へとゆっくりと歩き出した。顔に浮かぶのは、自信と満足が入り混じったような表情。そしてホームランがその完璧な390フィートの軌道を描き終えると、ソトは初めて頭を下げ、ベースを一周し始めた。

これが、これから幾度となく見られるであろう第一歩であることは間違いない。

前日の開幕戦では、同点のチャンスで迎えた最終打席で三振に倒れたソト。しかし金曜日の試合では、アストロズの右腕ハンター・ブラウンから第3回に放ったソロ本塁打でしっかりとリベンジを果たし、メッツをダイキン・パークでの3対1の勝利に導いた。

この一発が持つ意味は、舞台がどこであれ大きかっただろう。だが今回は特に特別だった。なぜなら、これはソトがメッツと15年契約を結んで以来、初めての本塁打だったのだから。


これは、ソトがどんな選手になれるのか、そして何ができるのかを早くも垣間見せる一打だった。

「だからこそ、彼は7億6500万ドルを手にしたんだよ」と、チームメートのフランシスコ・リンドーアは語った。


メジャー屈指の長打力を誇る打者であるソトは、昨季ヤンキースで自己最多となる41本塁打を記録した。キャリア5シーズンのフルシーズン平均では、年間33本塁打を放っている。

過去にもっと飛距離も打球速度もある本塁打を記録してきたソトだが、この一発は開幕戦の悔しさを晴らす一撃となった。前日、メッツはアストロズのクローザー、ジョシュ・ヘイダーの前に三振を喫し敗戦を喫していたが、翌日にはアストロズ先発のハンター・ブラウンの95.9マイル(約154キロ)のカッターを捉え、ゾーンのやや高めの球を鋭いライナーでスタンドに運んだ。


「いや、信じられないよ。1ボール2ストライクから、時速95マイルのカッターが内角高めに来たのに、あれをスタンドに放り込むなんてね」とリリーフ投手のリード・ギャレットは語った。「彼が“あの選手”である理由がわかるよ。本当にビースト(野獣)だ。」

この試合で最大の恩恵を受けたのは、先発投手のタイラー・メギルだった。彼は5回を超える好投を見せて勝利投手となった。6回の一死満塁のピンチを無失点で切り抜けたギャレットの救援も大きかった。さらに、9回を完璧に締めくくった守護神エドウィン・ディアスは、春季キャンプで見られなかった球速をほぼ取り戻しており、好材料が揃った試合だった。


だが、この日の主役はやはり“ショーマン”――フアン・ソトだった。

「最初の1本はいつだって特別だよ」とソトは語った。


ソトは、メッツでのキャリア初期にこれほどの評価や巨額契約を受けていることでプレッシャーを感じているかと問われると、即座にこう答えた。

「いいや、まったく感じてないよ。」

そして、当然だろう。彼はこれまで、いくつものチームで同じような状況を乗り越えてきた実績がある。成功することが、もはや当たり前のようになっている。

彼の並ぶ名前もまた、殿堂入り級のスターたちだ。金曜日の試合で記録した成績により、ソトは27歳の誕生日を迎える前に「本塁打+四球」を記録した試合数で、メル・オット(Mel Ott)にあと1試合と迫った。これを上回るのは、ミッキー・マントル、ジミー・フォックス、エディ・マシューズ、そしてマイク・トラウトの4人だけだ。

「まさに狙ったところに投げたんだ」と、アストロズのブラウンは語った。「でも、あの選手は本当に素晴らしい打者で、予想以上のスイングをしてきた。」

仮にソトが契約期間中、毎年平均で20本塁打を記録したとすれば、キャリア通算ではメッツ史上最多本塁打を記録する可能性もある(もちろん、ピート・アロンソが黙っていればの話だが)。その場合、通算500本塁打超えも見えてくる。仮にそこまで届かなかったとしても、今後10年以上にわたって、彼が何本もの打球をスタンドに運ぶことになるのは間違いない。


それでも、ソト自身も「最初の1本」は特別だと認めている。打った直後のバットを放る仕草や、歩くような走塁について「楽しかったのか」と聞かれると、ソトは笑みを浮かべて、こう答えた。

「君はどう思う?」
「ホームランは、いつだって楽しいさ。」

アンソニー・ディコモ:MLB.comメッツ担当
引用元:mlb.com

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