フィラデルフィア — これは最高の瞬間だった。
タイワン・ウォーカーにとって、そしてチームメイト、コーチ、監督、そしてとりわけ彼の母親にとっても。この1年、ウォーカーには本当に多くのことが起きていた。困難なこともたくさんあった。だからこそ、木曜の午後、シチズンズ・バンク・パークでのロッキーズ戦に3対1で勝利し、6回裏にフルカウントからスライダーでハンター・グッドマンを空振り三振に仕留めた瞬間、彼は大きな声で叫んだ。
ウォーカーはこの試合で好投し、フィリーズのシリーズスイープに貢献。交代時にはスタンドのファンが総立ちで拍手を送り、彼を称えた。
「母が今日、球場に来てたんだ。きっとすごく喜んでくれたと思う」とウォーカーは語った。「彼女が気分よく過ごせたなら、それだけで十分だよ。彼女が幸せなら、それが一番だから。」
ウォーカーは今季初登板で6回無失点の好投を見せた。被安打3、与四球1、奪三振4という内容で、ここ1年で最も内容の良い先発だった。試合後にクラブハウスへ戻ると、母親であるネリー・ガルシアから届いた「何十通もの」メッセージがスマートフォンに並んでいたという。彼女はアリゾナからわざわざ息子の登板を見るために駆けつけていた。
「母からのメッセージは、誇らしい、幸せだっていう言葉ばかりだったよ」とウォーカーは語った。「試合中ずっと泣いてたって言ってた。」
ウォーカーによると、母が最後に試合で泣いたのは「昨年、自分がブーイングを受けたとき」だったという。「でも今はとても喜んでくれてる。オフシーズンには本当に一生懸命取り組んだし、フィリーズも自分のためにしっかりとしたプログラムを用意してくれた。とにかく全力でやりきったし、それが結果に表れたと思う。」
ちなみに先月、フロリダ州クリアウォーターのキャンプでウォーカーは、昨シーズンについて「ひどいシーズンだった」と率直に語っていた。
ウォーカーの言うことは間違っていなかった。昨シーズン、彼は19試合(うち15先発)に登板して3勝7敗、防御率7.10という厳しい成績だった。この防御率は、フィリーズの投手としては1930年以来のワースト記録(最低75イニング登板が条件)だった。
昨年の春、ウォーカーは健康面でも問題を抱えており、開幕は故障者リストで迎えた。その後復帰した際には、当時防御率1.67という好成績を残していた右腕スペンサー・ターンブルをローテーションから押しのける形となった。
だが、復帰後も苦戦は続き、最初の14先発で防御率6.50。最終的にはブルペンに降格され、ポストシーズンのロースターにも入れなかった。そして、ファンからはたびたびブーイングを浴びることになった。
ウォーカーは今春のグレープフルーツリーグ終盤、最後の2登板で苦戦した際にもブーイングを浴びた。開幕戦となったワシントンでの選手紹介のときも、そして月曜日の本拠地開幕戦の前にも、ブーイングが飛んだ。
その理由は単にマウンド上での不振だけではない。彼が4年総額7200万ドルの契約のうち、まだ2年・3600万ドルを残していることも、ファンの不満を招いていた。
だがその舞台裏では、ウォーカーは地道に努力を続けていた。そして、チームメイトたちはそんな彼を変わらず支え続けていた。
ウォーカーはフィリーズのクラブハウス内で人気者だ。ロブ・トムソン監督は昨シーズンのある試合を今でもよく覚えているという。あの日、ブルペンを休ませるためにウォーカーが数イニング投げる必要があったが、彼は打ち込まれていた。
それでもイニングを終えるたびに、トムソン監督は「まだ行けるか?」とウォーカーに尋ねた。
One more time for Tai 👏 pic.twitter.com/ZdaeJKlDgu
— Philadelphia Phillies (@Phillies) April 3, 2025
そのたびに、ウォーカーは「もちろん、行けます」と答えた。
「クラブハウスの扉の向こうで、彼がこのチームにもたらしているものを、人々はなかなか目にすることができないんだ」とトムソン監督は語った。
「俺たちはいつだって彼の味方だよ」とカイル・シュワーバーは語った。「一番大きいのは、彼の姿勢だと思う。毎回登板後にはちゃんと取材にも応じるし、責任から逃げないタイプの人間なんだ。…そんな彼を責めるなんて、俺には到底できないね。彼は本気で良くなろうとしてる。」
「誰だって失敗するためにマウンドに立ってるわけじゃない。そして今日は、彼が自分の投球をしっかり見せた。本当に誇りに思っていいし、これを弾みにしてほしいよ。」
木曜日の試合で、ウォーカーのシンカーは最速93.9マイル(約151km/h)を計測。93マイル以上を記録した球は6球にのぼり、これは昨年1年間での合計(27球)と比べても大きな違いだった。さらにこの日は、11回の空振りを奪っており、1試合でこれ以上の空振り数を記録したのは2023年9月11日以来のことだった。
「とにかくストライクゾーンにしっかり投げ込むこと。先行して、ストライクを取っていく。それだけさ」とウォーカーは語った。
ウォーカーは次回、アトランタでブレーブス戦に先発登板する予定だ。彼がこのままローテーションに残り続けるかどうかは現時点では不透明だ。現在彼が先発に入っているのは、左腕レンジャー・スアレスが15日間の負傷者リストに入っているためである。
スアレスは数週間以内に復帰する可能性がある。
それまでの間、ウォーカーは木曜日の好投を弾みに、さらに勢いに乗っていきたいところだ。
あの日の投球は、まさに「見る価値のある」ものだった。
「まあ、もちろん、あんなにずっとブーイングを聞いていたいとは思わないよ」とウォーカーは語った。「でも、それも野球の一部さ。ここ(フィラデルフィア)でプレーするのは簡単じゃない。でも、調子が良くてチームが勝ってるときは、ここのファンほど心強い存在はいないよ。」
トッド・ゾレッキ:MLB.comフィリーズ担当
引用元:mlb.com