ニューヨーク — 笑顔を輝かせながら胸を叩いたJ.C.エスカラは、振り返ってヤンキースのほぼ全選手が自分に向かって駆け寄ってくるのを見た。これはメジャー初のサヨナラ打を放った彼にふさわしい祝福だった。最初に飛び込んできたのはオースティン・ウェルズで、その後アンソニー・ボルピーが縦縞のユニフォームを引きちぎらんばかりに掴みかかってきた。ボタンはかろうじて外れずに持ちこたえた。
ドライバーからメジャーリーガーへ ヤンキースの開幕ロスター入りでエスカーラのクレイジーストーリーはまだまだ継続中 *2025年3月23日
元UberドライバーJ.C.エスカラ ついに勝ち取った初出場&初安打! *2025年4月4日
「一生忘れられない瞬間だよ」とエスカラは語った。「子どものころに夢見ていたことが、いま目の前で現実になっているんだ。」
エスカラが決勝の犠牲フライを放ち、数人のチームメートたちも今季最高とも言える勝利にふさわしい活躍を見せた。トレント・グリシャムは途中出場から同点本塁打を放ち、デビン・ウィリアムズは土壇場で満塁のピンチを切り抜けた。そしてヤンキースは現地水曜夜、ヤンキー・スタジアムでパドレスに延長10回、4対3で劇的な勝利を収めた。
「本当に粘り強く戦ったし、根性を見せたと思うよ」とグリシャムは語った。「このシリーズは、このロッカールームにいる選手たちの力を象徴するような展開だった。どの試合も苦しい展開だったけど、最後まで諦めずに戦い続けた。全部の試合で勝負に絡んでいて、最後の2試合を取れたのは本当に大きかった。」
水曜日の逆転劇は、奇跡的とも言えるものだった。というのも、サンディエゴのディラン・シースが7回途中までノーヒットノーランを継続していたからだ。その流れを打ち破ったのがコディ・ベリンジャーの2階席への本塁打。あの一振りがすべてを変えた。ヤンキースは初ヒットを記録し、試合は同点に。そしてシーズはまもなく右前腕の痙攣により降板した。
サンディエゴは8回に2点を追加しリードを奪ったが、その間、場内にはやや不思議な歓声が広がっていた。しかしその歓声はパドレスへのものではなく、ニックスの試合に向けられたものだった。NBAイースタン・カンファレンス準決勝第2戦で、ニックスが20点差をひっくり返してセルティックスを破るという劇的な展開を見せていたのだ。多くのファンがスマートフォンでバスケットボールの試合をチェックしながら野球を観戦していた。
「ニックスが良い試合をしてるんだろうな、とは思ってたよ」とアーロン・ブーン監督は語った。
ヤンキースもまた、ニックスに負けじと盛り返し、そしてチームが求めていた一打をグリシャムが放った。
2023年12月のフアン・ソトとの大型トレードで“添え物”のように見られていたグリシャムだが、出場機会の増加に伴い、守備中心とされた評価を大きく上回る活躍を見せている。ジェイソン・アダムから放った右翼2階席への本塁打は、今季自身10本目となり、昨季の通算本塁打数をすでに超えた。
「チームの仲間たちと一緒に野球を楽しめてる。それが一番大きいよ」とグリシャムは語った。「このクラブハウスの雰囲気は本当に素晴らしい。リーダーである“キャプテン”(アーロン・ジャッジ)が中心となって引っ張ってくれているし、みんなと一緒に過ごす時間が本当に楽しいよ。」
ルーク・ウィーバーがリリーフで5つのアウトを取ったあと、ブルペンの電話が鳴り、デビン・ウィリアムズが呼ばれた。ヤンキースに加入してから1か月余り、彼のパフォーマンスは期待に応えるものとは言い難く、4月にはクローザーの役割から外されていた。それでも、月曜のシリーズ初戦で苦しい登板をしたあとも、ウィリアムズは「自信はむしろ高まっている」と語り、前向きな姿勢を崩していない。
ブーン監督は一貫して、ウィリアムズが今季のヤンキースにとって重要な役割を果たすと信じている。そして、この日の大事な場面でウィリアムズを投入した理由については、実にシンプルだった。「必要だった、それだけだ。」
セーフティネットはなく、二塁には自動ランナーが踊っている状況。ウィリアムズはパドレスの上位打線に立ち向かった。四球と死球があって決して完璧ではなかったが、結果は出した。特にフルカウントからの「エアベンダー」(と呼ばれる魔球)は見事で、ザンダー・ボガーツから空振り三振を奪い、満塁のピンチを切り抜けた。
ウィリアムズは拳を突き上げ、雄叫びを上げ、さらにもう一度叫んだ。しかし本人いわく、その瞬間は「ほとんど記憶が飛んでいた」そうで、「映像を見直さないと、ちゃんと実感できないかも」と語った。「でも、それはいいことなんだ。自分がやるべきことに完全に集中できていたってことだから。」
「本当に大事な場面だったよね」とウィリアムズは続けた。「二塁に(自動の)ランナーがいる状態で、無失点で切り抜けられたから、あとはうちの打線がなんとかしてくれると思ってた。で、実際にそうなったんだ。」
グリシャムの本塁打、ウィリアムズの火消し、エスカラの犠牲フライ――これらすべては、マックス・フリードの存在なくしては実現しなかった。彼の登板試合でヤンキースはこれで8戦全勝となった。
ヤンキースでのキャリアを圧巻の形でスタートさせたフリードは、この日も7回1失点とパドレス打線を封じ込めた。8奪三振、無四球、被安打5という内容で、唯一の失点は4回にジャクソン・メリルに許した本塁打のみ。これはフリードにとって4月15日以来となる自責点だった。
「今年の登板の中で、制球力という点では一番良かった試合だったんじゃないかと思う」とブーン監督は語った。「もちろん、これまでの彼の投球内容を考えると、それは相当な称賛だよ。」
フリードの防御率は、51回2/3を投げた時点でア・リーグトップの1.05。ヤンキースの球団史においても、開幕から8先発でこれを上回ったのは、1956年のホワイティ・フォード(防御率1.01)と、1984年のフィル・ニークロ(1.04)だけだ。
「自分たちらしい野球ができたと思う」とフリードは語った。「本当に大きな勝利だった。途中でビハインドになっても、打線が常に巻き返してくれた。素晴らしいシリーズ勝ちだったよ。」
ブライアン・ホック:MLB.comヤンキース担当
引用元:mlb.com