今年は、数多くのビッグネームのプロスペクトたちがメジャーリーグに昇格してきています。現在、MLBパイプラインのトップ100プロスペクトのうち9人がメジャーのロースターに名を連ねており、開幕から在籍している選手たちは近く“卒業”(※プロスペクト対象外)となる見込みです。ただし、クマール・ロッカーのように故障者リスト入りしている選手もいます。また、一時的に昇格してから再びトリプルAに戻った選手もいて、再チャンスを待っている状況です。さらにその一方で、「初のメジャー昇格の電話」を待ち望む選手も数多く存在します。
同時に、マイナー下位レベルでも非常にエキサイティングなことが起きており、2025年のドラフトも目前に迫っています。今週の「MLB Pipeline Inbox」では、こうしたさまざまな動きをカバーする内容となっており、以下のような質問に答えています:
- メジャー昇格によって最も注目を集めそうなプロスペクトは誰か?
- 今季からフルシーズンでプレーを始めた選手は?
- コンプレックスリーグでの注目選手は?
- トップ10指名権を持つ球団のドラフト戦略は?
「アンドリュー・ペインターのメジャーデビューは、2025年のプロスペクト関連で最もインパクトのある出来事になるでしょうか?」
―― @blahbla92342524.bsky.social より
この質問は、今週の「MLB Pipeline Podcast」のメールバッグコーナーで取り上げました。ジョージ・ロンバード Jr.のインタビューもおすすめですが、その後のメールバッグコーナーの回答にもぜひ注目してください!
この質問を選んだ理由のひとつは、ジム・カリスと私(ジョナサン・メイヨ)がこのテーマについて意見が分かれたからです。健全な意見の対立って、聞いてて楽しいですよね?
私はこの質問の前提に賛成で、現在トップ100で全体5位にランクインしているアンドリュー・ペインターこそが、今季最もインパクトを与える「プロスペクトの動き」になると考えています。
(ちなみにここで言う「プロスペクトの動き」とは、メジャー昇格を意味するものであると理解しています。「ダブルAに昇格する」のも確かに興奮しますが、ここで言う“インパクト”の定義とは少しズレるでしょう。)
私の考えはこうです:
アンドリュー・ペインターはトミー・ジョン手術を経て、2022年以来となる本格的な実戦登板を今年ようやく開始しました。アリゾナ秋季リーグ(AFL)では素晴らしいパフォーマンスを見せ、開幕時点でもすでに実戦に耐えうる健康状態にありました。とはいえ、フィリーズは慎重に段階を踏んで彼を起用しており、実際のデビューは4月11日のシングルA・クリアウォーター戦まで待たなければなりませんでした。
その後、4試合をクリアウォーターで投げ、5月2日(木)にはトリプルA・リーハイバレーで初登板を果たしました。ここまで5登板で計14回1/3を投げており、球団はイニング数を厳密に管理しています。それは、シーズン終盤、特にポストシーズンに向けて“体力・投球数の余裕”を残しておきたいからです。
つまり、ペインターを「夏の途中に獲得するエース級の新戦力」のように活用するのがフィリーズの狙いです。彼が昇格するその瞬間は、まるで大型トレードで一流投手を手に入れたかのようなインパクトを持つはずです。
一方、ジム・カリスは“未来”ではなく“現在”に目を向けました。そして、「2025年全体で最もインパクトのある動き」という設問に対し、それも悪くない見解です。
彼は、レッドソックスが開幕ロースターにクリスチャン・キャンベルを入れた判断こそが、最も良い動きだったと後々評価されるだろうと考えています。
キャンベルはもうすぐプロスペクト卒業となりますが、現在のところOPS.819という好成績で堅実なルーキーシーズンを送っています。ジムの主張は、「シーズン全体を通して先発出場し、チームのプレーオフ進出に貢献する選手」のほうが、「シーズン途中から加わる投手」よりも全体として価値が大きいというものです。
Q:ブライス・レイナーは今のところシングルAでとても良いパフォーマンスを見せています。この調子が続けば、ランキングで一気にジャンプアップすると思いますか?それとも、まずはある程度の期間続けてからですか?
―― @ebodz13 より
私たちは現在、2025年シーズンで初めての「マーケット修正(=ランキング再評価)」を進めているところです。
レイナーは、シングルAのレイクランドで打率.302/出塁率.397/長打率.508という成績を残しており、当然ながら名前は議論に上がりました。
ただし、現時点では大きく順位を変えず、現状の47位付近にとどめる判断となりました。というのも、プロキャリアの始まりであるわずか18試合・63打数のサンプルでは、まだ“ジャンプアップ”させるには早いと考えたからです。
ただし、このままの成績を続けてくれれば、次回の修正、またはドラフト後に行う大規模再ランク時に大きく順位が上がる可能性が高いと見ています。私個人としても、レイナーがこの調子を維持できるとかなり自信を持っています。
同様のことは、昨年のドラフトでレイナーの2つ上(全体9位)で指名されたパイレーツのコナー・グリフィンにも言えます。彼も現在フロリダ・ステートリーグでプレーしています。打撃成績はレイナーに及びませんが、5ツールすべてをしっかり見せている印象です。
この2人は今後も注視していきます。
Q:コンプレックスリーグ(FCL/ACL)で今後株を上げそうな注目選手は?
―― @tschulmanreport より
フロリダ(FCL)およびアリゾナ(ACL)のコンプレックスリーグは、5月3日(土)に開幕しました。
開幕直前にはサム・ダイクストラが「注目のプロスペクト14人」を紹介しており、今回の質問に対してはこのリストから答えるのが適切でしょう。
◆ レッドソックス:ジャスティン・ゴンザレス(チーム内プロスペクトランク16位)
彼はルーキーリーグからスタートし、早くもシングルA・セイラムへ昇格を果たした注目株のひとり。身長6フィート4インチ(約193cm)の大型外野手/一塁手タイプで、圧倒的なローパワーを誇ります。
昨年のドミニカン・サマーリーグ(DSL)ではOPS.908という好成績を残し、2024年1月に25万ドルでレッドソックスと契約。
今季は高い打球速度(exit velocity)も記録しており、将来的にはダメージを与えられる完成度の高い打者として期待されています。
◆ レッズ:タイソン・ルイス(チーム内プロスペクトランク9位)
アリゾナ・コンプレックスリーグ(ACL)で注目したいのが、左打ちの内野手タイソン・ルイスです。彼と2023年指名のサミー・スタフューラのどちらをランキング上位に置くかは社内でも議論があり、最終的に1位差でスタフューラが上に。
とはいえ、ルイスもツールに優れた高校生ショートで、今後フルシーズンリーグ(例:デイトナ)への昇格が期待される存在。昨年のスタフューラもACLで好成績を残し、すぐに昇格を勝ち取ったため、ルイスも同様の道をたどる可能性があります。
◆ パイレーツ:エドワード・フロレンティーノ(チーム内プロスペクトランク23位)
少し“深掘り”になりますが、パイレーツファンとして個人的に強く推したいのがエドワード・フロレンティーノ。
昨年DSLでまずまずのデビューを飾り、今春は非公式ながらスプリングトレーニングとエクステンデッド・スプリングでOPS 1.100を記録したと評判です。
FCL開幕後も勢いは衰えず、ここまで12打数4安打(2塁打+本塁打含む)と好調スタート。近いうちにフルシーズンA・ブレーデントンへの昇格も視野に入るかもしれません。
Q:レッズファンですが、今年のドラフトでの最初の指名(全体9位)では現実的にどんな選手が候補になりますか?できれば、すぐに貢献できる大学出身の野手がいいです。
―― @mstuart142 より
レッズは今年のドラフトで全体9位指名を持っており、大学野手の1巡目指名にはこれまで積極的な球団です。たとえば2021年にはマット・マクレイン、2018年にはジョナサン・インディア、2016年にはニック・センゼルといった実績があります。
MLB.comでは最新のモックドラフト第1弾を公開したばかりで、そこではジム・カリスが「テキサスA&Mの外野手ジェイス・ラビオレット」をレッズの指名候補に挙げています。
ラビオレットは圧倒的なパワーと身体能力を兼ね備えており、非常に魅力的な素材ですが、スイングの粗さや空振りの多さが課題とも言われています。
他に大学野手で名前が挙がる可能性があるのは、ノースカロライナ大の捕手ルーク・スティーブンソン。ただし、9位付近では大学投手が有力視されているゾーンでもあります。レッズは直近2年連続で大学投手を指名しており、それがうまく機能していることも背景にあります。
たとえば:
- カイソン・ウィザースプーン(オクラホマ大)
- タイラー・ブレムナー(カリフォルニア・サンタバーバラ)
※後者は最近評価を上げており、絶好のタイミングで上昇中
また、今年のドラフト全体の傾向として「高校内野手が豊作」であることも見逃せません。
仮に誰かがスリップして9位まで残った場合は、以下のような高校生選手も候補になる可能性があります:
- ビリー・カールソン
- イーライ・ウィリッツ
- ケイソン・カニンガム
- ジョジョ・パーカー
- スティール・ホール
- ダニエル・ピアース
→いずれもMLBドラフトトップ150で上位20人以内にランクインしている有力候補です。
いずれにせよ、レッズがどの方向に進むかはまだ確定していませんが、即戦力の大学野手という希望も、現時点では十分現実的な可能性の範囲内にあるといえるでしょう。
ジョナサン・メイヨ:MLBPipeline.com記者
引用元:mlb.com