それから1年以上のリハビリを経て、ヘンドリクスはようやく実戦の舞台に戻ってきた。
「リハビリのプロセスは決して楽なものではなかった」とヘンドリクスは振り返る。「でも、こうしてマウンドに立てることがどれだけ幸せなことかを改めて感じている。」
試合では、ヘンドリクスのファストボールは90マイル前半を計測し、スライダーとカッターもキレが戻っていた。初回こそ制球に苦しむ場面もあったが、徐々に感覚を取り戻し、三振を奪うたびに拳を握りしめた。
レッドソックスのアレックス・コーラ監督も、その姿を見て安堵の表情を浮かべた。
Hendriks on the hill. pic.twitter.com/aQn1STFHXF
— Red Sox (@RedSox) February 22, 2025
「彼は戦士だよ」とコーラ監督。「こうして戻ってきたこと自体が素晴らしいし、これからもっと良くなっていくと思う。」
ヘンドリクス自身も、今回の登板を「第一歩」と位置付けている。
「まだ全然仕上がっていないけど、これがリハビリ明けの最初のステップ。今後はもっと球速も上げていきたいし、制球も磨いていくつもりだ。」
開幕まで1カ月を切り、レッドソックスのクローザー争いは激しさを増している。ヘンドリクスがそのポジションを勝ち取るためには、さらなる状態の向上が求められるだろう。
「自分にできることは、毎回の登板で全力を尽くすことだけだ」とヘンドリクスは語る。「チームがどんな役割を与えてくれるのかはわからないけど、どんな場面でも投げられる準備をしておくつもりだ。」
トミー・ジョン手術からの完全復活を目指し、ヘンドリクスの挑戦はまだ始まったばかりだ。
ヘンドリクスは昨年の春季キャンプがすでに始まっていた段階でレッドソックスと2年契約を結んだ。その時点で、チームは本格的な戦力としての活躍を期待するのは2年目になると見込んでいた。
ヘンドリクス自身は2024年シーズンに何とか貢献しようと努力したが、マイナーでのリハビリ登板中に肘の炎症を発症し、その後チームがポストシーズン争いから脱落したことで、最終的に復帰プランは白紙となった。
しかし、今年は完全復活が現実味を帯びている。レイズ戦での登板では、フォーシームが最速96マイルを記録し、順調な仕上がりを示した。
「最初のライブBP(実戦形式の投球練習)では91~92マイルだった」とヘンドリクス。「2回目は92~94マイル、3回目は91~93マイル。そして今日は93~96マイルだった。いい方向に向かっているのは間違いないね。ただ、今はまだ春季キャンプの段階で、本番とは違う。実際に試合で勝敗がかかっていて、相手チームと審判がいる状況の方が、自分はもっと良い投球ができるんだ。」
ヘンドリクスは水曜日の登板で20球を投げ、そのうち12球がストライクだった。唯一許したヒットは、同じオーストラリア出身のカーティス・ミードに打たれたものだった。
「クリーンなイニングだったけど、唯一打たれたのがオーストラリア人っていうのがムカつくよ」とヘンドリクスは冗談交じりに笑った。
普段は陽気で冗談好きなヘンドリクスだが、マウンドに上がるとまるで別人になる。そして、彼はこれからの1か月間、レッドソックスに「勝ち試合の9回を任せるべきは自分だ」と証明するために全力を尽くすつもりだ。ライバルとなるのは、ベテラン左腕アロルディス・チャップマンと成長著しい右腕ジャスティン・スラテンだ。
「ただチャンスが欲しいだけなんだ」とヘンドリクス。「もしクローザーの座を勝ち取れたら、それはそれで素晴らしいし、もし勝ち取れなかったとしても、自分の投球スタイルや考え方は変わらない。ただ、7回でガッツポーズをすると『コイツちょっとイタいな』って思われるだろ?でも試合の最後にやると、もっとエネルギッシュに見えるんだよ。」
「とにかくチームの勝利のために、自分がベストなポジションで貢献したい。このチームは素晴らしい。もし状況が流動的になったとしても、それはそれで受け止める。でも、俺はクローザーの座を勝ち取るつもりでいるよ。」
そして、もし彼がその役割を得たなら、セーブ成功でも失敗でも、彼の熱い感情が全面に表れることだろう。
「自分の感情を前面に出すことで、自分の最高の状態を引き出せるんだ」とヘンドリクス。「だからこそ、悪い球を投げた時やコントロールミスをした時、競争力のない球を投げた時に自分に向かって怒鳴ったり、叫んだりするんだ。それが自分のやり方さ。」
イアン・ブラウン:MLB.comレッドソックス担当
引用元:mlb.com