2025年シーズンの第1か月が終了し、各球団の出だしが明らかになってきました。予想通りの成績を出しているチームもあれば、良くも悪くも意外なスタートを切ったチームもあります。
この最初の1か月から何が見えてくるのでしょうか?
MLB.comは20人の球団フロント幹部に対してアンケートを実施し、2025年シーズン序盤の印象や今後への見通しについて意見を集めました(※回答は任意で、複数回答も可)。
「最も驚いたチームは?」
- ジャイアンツ:8票
- アスレチックス:5票
- カブス:3票
- パドレス:3票
- ヤンキース:1票
ジャイアンツは19勝13敗と好スタートを切り、熾烈なナ・リーグ西地区争いの中でも上位に食い込んでいます。
打線はナ・リーグ全体で中位(得点数8位、OPSは.684で15球団中13位)ながら、投手陣が好調。チーム防御率は3.58で4位、奪三振数も4位(279個)を記録。特にブルペンは防御率2.52(2位)、WHIP 1.03(2位)とリーグ屈指の安定感を誇っています。
「強豪揃いの地区で本当にいい戦いをしている。投手陣が期待以上の働きをしているし、イ・ジョンフが攻撃面の起爆剤になっている」
— ア・リーグ球団幹部
「イ・ジョンフが打線に勢いを与え、ローガン・ウェブはハイレベルな投球を続けている。リリーフも非常に強力。ウィリー・アダメスが乗ってきたら、さらに脅威になるだろう」
— ナ・リーグ球団幹部
アスレチックスもサプライズチームの1つ。16勝15敗と勝率5割超で、マリナーズ、アストロズ、レンジャーズと共にAL西地区上位争いを展開しています。
オフにはルイス・セベリーノ、ホセ・ルクレルクの獲得や、ジェフリー・スプリングスのトレード、そしてブレント・ルッカー(5年6000万ドル)、ローレンス・バトラー(7年6550万ドル)との大型契約延長など積極補強が話題となりました。これらの動きが現在の成績にしっかりと結びついており、他球団幹部からも5票を獲得しています。
「彼ら(アスレチックス)は今年ある程度前進するだろうとは思っていたが、実際には予想以上にプロセスが進んでいるように見える」
― ナ・リーグ球団幹部
アスレチックスでは、一塁手タイラー・ソダーストロムがブレイク中。32試合で9本塁打・24打点・OPS.905と絶好調です。また、ルーキー遊撃手ジェイコブ・ウィルソンも、2023年ドラフト全体6位指名の実力を発揮しています。
「かなり厳しいチーム状況だが、若手が期待通りかそれ以上の活躍をしている。ソダーストロムのブレイクは本物のようだし、ウィルソン、ルッカー、バトラー、そしてニック・カーツも好調なシーズンを送りそう。先発投手陣の層の薄さがプレーオフ争いの壁になるかもしれないが、ここ数年低迷していた球団にとっては良い兆しだ」
― ア・リーグ球団幹部
カブスとパドレスにもそれぞれ3票が入りました。
ある球団幹部はパドレスについて、「年齢層の高い野手陣と、支配的とは言えない先発陣にもかかわらず結果を出している」と評価し、別の幹部は「負傷者の多さとオフシーズンの補強の少なさを考えれば、ここまでやっているのは驚き」と述べました。
一方のカブスは防御率3.98ながらナ・リーグ中地区の首位をキープ。打線では、カイル・タッカー、鈴木誠也、ピート・クロウ=アームストロングの外野トリオを中心に活躍。
チームOPSは.799でナ・リーグ1位(ドジャースと並ぶ)、本塁打数46本で2位、盗塁数44でMLB全体1位と、攻撃面でリーグをリードしています。
「これまでの対戦相手や、ジャスティン・スティールを欠いていることを考えると、この成績は非常に立派だ」
― ナ・リーグ球団幹部
カブスは今オフに、カーソン・ケリーとマシュー・ボイドをFAで獲得し、さらにカイル・タッカーとライアン・プレスリーをトレードで補強しました。
「今オフに積極的に動いたことが結果に結びついていると思う」
― ア・リーグ球団幹部
唯一他に票を得たのはヤンキースで、フアン・ソトのFA流出、ゲリット・コールの肘の故障による今季絶望、さらに昨年の新人王ルイス・ヒルの故障離脱(前半戦)など、大きな戦力ダウンがありながらも、ア・リーグ東地区の首位に立っています。
「あれだけの故障者やソトの流出があったのに、ここまで戦えているのは本当に素晴らしい」
― ア・リーグ球団幹部
最大の失望チームは?
- オリオールズ:12票
- ツインズ:3票
- ブレーブス:3票
- ブルージェイズ:1票
この質問では、ほとんどの幹部が迷うことなくオリオールズを挙げました。開幕1か月で12勝18敗、ア・リーグ東地区の最下位という成績は、期待されたチームとしては明らかに失望とされています。
「先発が平均的でも打線が引っ張るはずだった。けれど、先発陣の故障と不調が重なり、ガナー・ヘンダーソン、ヘストン・カーステッド、タイラー・オニール、アドリー・ラッチマンら野手陣まで調子が上がらず、総崩れだ」
― ナ・リーグ球団幹部
「タレントは揃っているのに、ここまで低調なのは異常」
― 別のナ・リーグ球団幹部
オリオールズの最大の失速要因は、投手陣の崩壊です。ア・リーグ最下位の防御率5.47は、先発ローテーションが6.04(リーグ最下位)、ブルペンも4.74(15球団中14位)という数字に象徴されています。
エースのコービン・バーンズがFAで流出した影響は大きく、加えてチャーリー・モートン、ディーン・クレマー、ケイド・ポビッチらの不調も、グレイソン・ロドリゲスの故障離脱を補うには不十分でした。
「投手がとにかく足りない。そして有望な補強候補も見当たらない」
― ア・リーグ球団幹部
ツインズとブレーブスは、それぞれ3票ずつを集めて2位にランクインしました。
ブレーブスの場合:
- 2023年ナ・リーグMVPのロナルド・アクーニャJr.が、昨季のACL断裂からまだ実戦復帰していない。
- スペンサー・ストライダーは手術から復帰したものの、初登板後すぐに右ハムストリング負傷で再びILへ。
- レイナルド・ロペスも肩の故障でシーズンの大半を欠場見込み。
開幕7連敗スタートの0勝7敗から、現在も勝率5割を争う位置にとどまっており、困難な状況が続いています。
「今の成績は、本来の実力を示していない。9月にはちゃんと上位争いに戻ってくると信じている。
でも、メッツが好調な中で、すでに掘ってしまったこの“穴”は埋めるのが難しいかもしれない」
― ナ・リーグ球団幹部
ツインズのスロースタートは、主力の不振によるものであり、ケガの影響ではないと指摘されています。
「他の不振チームは明確な負傷者を抱えており、回復すれば本来のプレーが期待できる。一方でツインズは、勝つための戦力が揃っているはずなのに機能していない。ロイス・ルイスやルーク・キーシャルが不在とはいえ、それ以外の主力選手のパフォーマンスが伴っていない」
― ア・リーグ球団幹部
もっとも、ア・リーグ全体が混戦のため、ツインズにも巻き返しの余地は十分あります。実際、先週は7試合中6勝と好転の兆しも見られました。
「中地区の絶対的な優勝候補ではなかったにせよ、7勝15敗のスタートは誰も予想していなかった。
ここ1週間ほどの流れが、反撃の始まりかもしれない」
― ア・リーグ球団幹部
今季最大の“驚き”となっている選手は?
👑 1位:イ・ジョンフ — 9票
冒頭の「驚きのチーム」で最も名前が挙がったジャイアンツのイ・ジョンフが、ここでも最多票を獲得しました。
26歳の韓国出身外野手は、2024年のMLBデビュー年こそわずか37試合出場・低調な成績に終わりましたが、今年は6年1億1,300万ドル契約の価値を完全に証明する活躍を見せています。
「1年前は“高すぎる契約”に思えたが、今やMVP候補のような働きぶりだ」
― ナ・リーグ球団幹部
リーは今季、開幕30試合で
- 打率.319/出塁率.375/長打率.526
- 3本塁打・18打点・リーグ最多の11二塁打
を記録しており、驚異的なジャイアンツ快進撃の中心に立っています。
ア・リーグの球団幹部は、こう語っています:
「これまでのところ、驚くべき長打力を発揮している。
このペースを維持できれば、あの契約は完全な掘り出し物だったということになるだろう」
カーソン・ケリー(カブス)
ケリーは今季、カブスで予想外の打撃力を発揮しており、
- 本塁打:7本
- 打点:21
- OPS:1.347(※32試合中わずか16試合先発ながら)
という衝撃的な数字を残しています。
「キャリアの大半をバックアップ捕手として過ごしてきた選手が、OPS1.400近くとは…」
「今やカブスで最も頼れる打者の一人と言ってもいい」
― ア・リーグ幹部
そのほか、1票ずつ獲得した選手についてのコメントも一部紹介します:
リース・ホスキンスについて(AL幹部)
「膝のケガで回転力が落ちたように見えたが、今季はパワーを完全に取り戻したように見える。
バットスピードが戻っており、かつてのような打撃成績が復活している」
エウヘニオ・スアレスについて(NL幹部)
「これまでの良かった時期・悪かった時期を踏まえた上での評価になるが、今季の序盤は非常に安定している。もちろん4本塁打試合がかなり印象を強めているけどね!」
「2024年は静かなシーズンだったが、2025年はシアトルのラインアップの安定要素になっている。特にDHとしての早い段階での活躍が、チーム内に必要な勢いと自信を与えた」
— ア・リーグ幹部(ホルヘ・ポランコについて)
最も失望された選手は?
最多票を集めたのは以下の3選手:
- ウィリー・アダメス(4票)
- ジョク・ピーダーソン(3票)
- マーカス・セミエン(3票)
以下の選手も1票ずつ挙げられました:
- サンディ・アルカンタラ
- エマヌエル・クラセ
- ネスター・コルテス
- ザック・ギャレン
- ルイス・ロバートJr.
- アンソニー・サンタンデール
- 佐々木朗希
◆ ウィリー・アダメス(ジャイアンツ)
おそらく今季のジャイアンツの好調ぶりの中で最大の意外性は、アダメスの不振を抱えながらもチームが首位争いをしているという点です。
- 打率/出塁率/長打率(OPS):.604
- 本塁打:2本(32試合時点)
アダメスはこのオフに7年1億8200万ドル(約280億円)の大型契約でジャイアンツに加入しました。これはポジションプレイヤーとしては、メッツのファン・ソト(7億6500万ドル)に次ぐ今オフ2番目の高額契約でした。
「オフシーズンにジャイアンツの主力補強として加わった選手という期待値を踏まえると、攻守両面での序盤の苦戦はより目立ってしまっている」
— ア・リーグ幹部(ウィリー・アダメスについて)
「この契約が今後どうなるのか、ジャイアンツはすでに心配しているはず」
— ナ・リーグ幹部
◆ジョク・ピーダーソン(レンジャーズ):3票
- 打率:.108
- 出塁率:.205
- 長打率:.176
- 本塁打:0本
- 打点:1(26試合時点)
「ピーダーソンは打撃専念型の選手でありながら、完全にバッティングを見失っている。2年総額**3700万ドル(約57億円)**の大型契約のスタートとしては非常に残念」
— ナ・リーグ幹部
◆マーカス・セミエン(レンジャーズ):3票
- 打率:.188
- 出塁率:.273
- 長打率:.250
- 本塁打:2本(31試合)
◆ その他の注目コメント(一部抜粋)
- 佐々木朗希について:
「彼はまるで“次のポール・スキンズ”のように称賛されていたが、今のところそうなっていない。与四球の多さが特に驚き」
— ア・リーグ幹部 - エマヌエル・クラセについて:
「ここ数年は手がつけられない投球をしていたのに、今季序盤の不振ぶりは誰にも予想できなかった」
— ナ・リーグ幹部 - ネスター・コルテスについて:
「彼のように個性的で魅力的な投手が活躍していると野球はもっと楽しくなる。このトレード(ヤンキースとブルワーズ間)は“お互いに得するトレード”に見えたが、今のところどちらのチームも期待したものは得られていない」
— ア・リーグ幹部
◆ 最も印象的な新人選手は?
- クリスチャン・キャンベル(レッドソックス):11票
- ジェイコブ・ウィルソン(アスレチックス):5票
- キャム・スミス:2票
- ジャクソン・ジョーブ:1票
🔴 クリスチャン・キャンベル(レッドソックス)
2023年ドラフト4巡目(全体132位)で指名されたばかりの22歳に、スプリングトレーニング終了時点で正二塁手の座を託したボストン。その期待に、キャンベルは打撃・守備・走塁の全てで応えている。
- 成績(29試合):
打率 .301 / 出塁率 .407 / 長打率 .495
本塁打 4本 - 守備ポジション:
二塁:24試合
中堅:4試合
左翼:1試合
「4巡目指名から、たった2年でメジャーの主力になるなんて信じられない。しかも内外野をこなすユーティリティ性もある」
— ナ・リーグ幹部
「彼は本物に見える。攻守で試合に影響を与えることができる」
— ナ・リーグ幹部
🟢 ジェイコブ・ウィルソン(アスレチックス)
2023年ドラフト全体6位指名の23歳。昨年はメジャーで28試合に出場しながら.629 OPSに終わったが、今季は攻守ともに成長が顕著。
- 成績(30試合):
打率 .331 / 出塁率 .347 / 長打率 .458
本塁打 3本 / 打点 16
「左右両打席からのコンタクト能力はエリート級。昨年と比べて明確な成長が見られる。アスレチックスの中核になる逸材だ」
— ア・リーグ幹部
彼に投票した球団幹部たちが注目する数字は、ウィルソンが今季118打数で三振をわずか6回しかしていないという点だ。
「彼のバットコントロールは、私がこれまで見てきた中でも最高レベルだ」
— ナ・リーグ幹部
「通常、メジャー昇格後はそうした能力が多少なりとも落ちるものだが、ウィルソンはMLBの舞台でも“エリート級の資質”を維持している」
マーク・ファインサンド:MLB.comシニア・ナショナル・リポーター
引用元:mlb.com