プレーオフのオッズが最も変動した10チーム

1か月でシーズンは決まらない。だが、物事を見直すには十分な期間だ。

2025年シーズンが3月27日に本格的に開幕してから、ほぼ1か月が経過した。その間に多くの変化があった。優勝候補と見られていたチームがスロースタートに苦しむ一方で、予想外の健闘を見せているチームもいくつかあり、今後の地区争いやプレーオフ戦線をかき乱す存在となりそうだ。

以下では、開幕日からプレーオフ進出確率(FanGraphs調べ)が最も大きく変動した10チーム(上昇幅・下降幅ともにトップ5)を紹介する(数値はすべて現地水曜日終了時点のデータ)。

【プレーオフ進出確率が最も上昇したチーム】

1位:タイガース(+26.1ポイント)

開幕時:46.0% → 現在:72.1%

タイガースは2025年の開幕を、2024年のシーズン終盤に起きた驚きの快進撃を土台に、新たな一歩を踏み出そうとしていた。昨年はまさかのポストシーズン進出を果たし、長らく低迷していた球団に再び活気をもたらした。その勢いは今季も継続しており、ここまで15勝10敗と好調なスタートを切っている。ア・リーグトップのチーム防御率「2.94」が、その原動力となっている。

昨季は、エースのタリク・スクーバルが登板しない日は「投手カオス」と呼ばれる奇策に頼らざるを得なかったが、2025年のタイガースは一転して、より伝統的なローテーションスタイルで好調を維持している。

先発陣は極めて安定しており、スクーバルとジャック・フラハティが盤石のワン・ツーパンチを形成。注目の若手ジャクソン・ジョーブも才能の片鱗を見せている。そして、2018年の全体1位指名投手ケイシー・マイズが、まさかのブレイクの兆しを見せているのも見逃せない。

マイズは2022年にトミー・ジョン手術と腰の手術を受け、翌年を全休。これまで通算61試合に登板し、防御率4.36という平凡な成績だった。しかし、今季ここまでの4先発では、防御率2.22を記録しており、裏付けとなる指標も優れている。まさに“元・全体1位”の片鱗を取り戻しつつある。


驚くべきことに、タイガースにはもう1人、“試練を乗り越えつつある元・全体1位指名選手”がいる。スペンサー・トーケルソンだ。

彼はオフシーズンにトレードの噂が浮上し、スプリングトレーニング時点では開幕メンバーに残れる保証すらなかった。しかしキャンプ終了からおよそ1か月が経った今、2020年ドラフトの全体1位指名選手は打順の中軸に定着し、7本塁打、21打点、OPS .944という堂々たる成績を残している。

2位:メッツ(+24.7ポイント)

開幕時:62.4% → 現在:87.1%

メッツのラインアップでOPSが.800を超えているのはわずか2人のみで、しかも7億6,500万ドル男のフアン・ソトはその中に入っていない。それに加えて、先発投手のショーン・マネイア(右脇腹の張り)とフランキー・モンタス(右広背筋の損傷)を故障で欠き、復帰の見通しも立っていない状況だ。

それでも、メッツは水曜日の試合で7連勝を飾り、木曜日時点でMLB最高の18勝7敗という戦績をマーク。ブレーブスとフィリーズがやや不調なこともあり、現在は全チーム中2番目に高いプレーオフ進出確率を誇っている。

こうした逆境の中でチームを支えているのが、なんと先発投手陣だ。タイラー・メギルとグリフィン・キャニングが穴を埋める好投を続け、千賀滉大は自身の故障から見事な復帰を果たし、さらにFA加入のクレイ・ホルムズはクローザーから先発への転向に成功。こうしてメッツはチーム防御率(2.34)・先発防御率(2.33)ともにメジャー1位を記録している。

そして忘れてはならないのが、一塁手ピート・アロンソだ。FAでの契約問題が注目されたが、最終的には2年5,400万ドル(2025年オプトアウト付き)でチームに残留。この条件はアロンソにとって“今年大活躍する動機”となっている。

そして実際、彼は見事に結果を出している。開幕から25試合で長打18本(本塁打6本)、26打点、OPS 1.122と爆発中。主砲ソトが本調子ではない中、アロンソがチームの得点力を大いに補っている。


3位:ジャイアンツ(+22.7ポイント)

開幕時:28.5% → 現在:51.2%

エースのローガン・ウェブを除けば、サンフランシスコの先発ローテーションは予想どおり安定感に欠けている。また、大型FA契約で加入したウィリー・アダメスも、今のところ目立ったインパクトは残していない。

だが、そうした不安材料にもかかわらず、ジャイアンツは熾烈なナ・リーグ西地区の争いの中で存在感を放っている。

その原動力のひとつが、2024年に左肩の手術でルーキーイヤーの大半を欠場したイ・ジョンフだ。今季は完全復活を果たし、FanGraphsによるWARでメジャー7位タイとなる1.4を記録。2023年オフに6年1億1300万ドルで契約した際にジャイアンツが期待していた通りの働きを見せている。

イ・ジョンフの活躍はある程度想定されていたが、ウィルマー・フローレスの大爆発は完全に想定外だった。


これまで「安定感はあるが地味」と評価されてきた33歳のベテランが、今季は打線の中心選手として躍動。ここまでメジャー最多の27打点、7本塁打を記録しており、そのうち6本は同点もしくは逆転弾と、まさに勝負所で頼れる存在となっている。

4位:カブス(+18.4ポイント)

開幕時:48.3% → 現在:66.7%

今季ここまで、オフに加入した選手の中で最も大きなインパクトを残しているのはカイル・タッカーかもしれない。しかし、それに隠れがちだが、地元シカゴ出身のカーソン・ケリーの存在も忘れてはならない。

カブスがケリーと2年1,150万ドルで契約したのは昨年12月のこと。当時はそれほど注目されなかったが、彼は今や大きな“掘り出し物”となっている。ここまで54打席で6本塁打、18打点、14四球、OPS 1.413という驚異的な数字を叩き出している。

さらに、若き中堅手ピート・クロウ=アームストロングも今季大きく開花しつつある。これまでは守備力の高さばかりが注目されていたが、今では攻撃面でも一線級の貢献を果たしており、「守備の名手以上の存在」であることを証明している。

こうした活躍が、カブスがここまでメジャー最多得点を記録している理由のひとつであり、開幕から16勝10敗という好スタートを切れた最大の要因でもある。しかも、カブスはMLBでも指折りの厳しい序盤の対戦カードを乗り越えての成績であることを考えると、その価値はさらに高い。


5位:パドレス(+17.8ポイント)

開幕時:32.9% → 現在:50.7%

パドレスは、4月中旬には「上昇チームランキング」のさらに上位に入っていてもおかしくなかった。実際、開幕14勝3敗という絶好のスタートを切っていたが、その後の8試合では3勝5敗とやや足踏みしている。

それでも、ナ・リーグ西地区で17勝8敗と首位をキープしており、シーズン序盤としては理想的な立ち上がり。ただし、ドジャース、ジャイアンツ、Dバックスといったライバルたちがすぐ後ろに迫っていることもあり、プレーオフ進出確率の上昇幅はやや控えめに見えている。

この序盤の快進撃において、最も大きな貢献をしている選手は間違いなくフェルナンド・タティス Jr.だ。開幕からMVP級の活躍を見せており、ジャクソン・メリル(右ハムストリングの張り)を欠く中でも、上位偏重の打線が崩壊せずに済んでいるのは彼のおかげといえる。

とはいえ、投手陣の働きも見逃せない。ダルビッシュ有が右肘の炎症で離脱し、ディラン・シースが防御率6.04と不安定な中でも、チーム全体の防御率は2.92でMLB2位。特に、FAで加入したニック・ピベッタは5先発で防御率1.20という安定感を見せている。

さらに、サンディエゴ自慢のブルペンは、ここまでメジャー最高の防御率1.76を誇っており、終盤の試合運びにおいて大きなアドバンテージをもたらしている。


【プレーオフ進出確率が最も下がったチーム】

1位:ブレーブス(-26.3ポイント)

開幕時:93.4% → 現在:67.1%

2024年シーズンは故障に苦しんだだけに、ブレーブスは2025年こそスムーズな船出を願っていたはずだった。しかし、“野球の神様”はそれを許さなかった。

まず先発投手のレイナルド・ロペスが右肩の手術で離脱、さらに外野手ジュリクソン・プロファーがPED(禁止薬物)違反で出場停止処分。エースのスペンサー・ストライダーも、右肘手術からの復帰登板はわずか1試合に終わり、今度は右ハムストリングの張りで再びIL入り。復活に期待された前サイ・ヤング賞投手クリス・セールは、防御率6.17と苦戦。守護神のライセル・イグレシアスも安定感を欠き、チームの外野陣は全30球団中ロイヤルズに次いでワースト2位の生産性という深刻な状況だ。

その結果、開幕前にはワールドシリーズ優勝候補の筆頭と見られていたブレーブスは、ここまで10勝14敗と大きく出遅れ。首位メッツとはすでに7.5ゲーム差をつけられている。

とはいえ、まだ希望はある。開幕18試合で5勝13敗と大きく負け越した後、ツインズ戦でスイープ、カージナルス戦でも2勝1敗とやや上向き傾向。ストライダーの故障も「軽度の筋損傷」で、長期離脱には至らない見込み。そして何より、ロナルド・アクーニャJr.の左膝ACL断裂からの復帰も、あと1か月以内に見込まれている。

プレーオフ争いから脱落するにはまだ早すぎる。ブレーブスを侮るべきではない。

2位:オリオールズ(-22.1ポイント)

開幕時:45.0% → 現在:22.9%

オフシーズンにFAで流出したコービン・バーンズの穴を埋めるような先発補強ができなかったこと、そしてスプリングトレーニング中にグレイソン・ロドリゲスが右肘の炎症で離脱(その後、再調整中に右広背筋の肉離れも発症)したことで、2025年のオリオールズのローテーションに懸念があったのは事実だった。

とはいえ、ここまで悪化するとは予想しにくかった。

今月初めには、開幕投手を務めたザック・エフリンも右広背筋の故障で離脱。そして現在、オリオールズの先発投手陣は防御率6.08でMLBワーストという壊滅的な状況となっている(開幕から23試合時点)。

さらに問題なのは、野手陣もそれを補うだけの打撃ができていないこと。
本来チームの中心となるはずの

  • ガナー・ヘンダーソン
  • アドリー・ラッチマン
  • ライアン・マウントキャッスル
  • ジョーダン・ウェストバーグ
  • タイラー・オニール

といった主力全員が、期待値を大きく下回るパフォーマンスにとどまっている。

その結果、チームはここまで28点の得失点差マイナス、成績も9勝14敗と低迷。2023年・2024年にプレーオフ進出を果たし、“次こそは”と期待されていたチームにとっては、大きな後退となるシーズン序盤となっている。

3位:ツインズ(-20.8ポイント)

開幕時:55.5% → 現在:34.7%

ツインズは2024年シーズン終盤に12勝27敗と大失速し、その後のオフシーズンも大きな補強はなし。それでもFanGraphsのプレシーズン予測ではAL中地区の優勝候補とされていた。

ところが2025年シーズンが始まると、ツインズは9勝15敗で地区4位に低迷中。

  • 主砲カルロス・コレアが不振
  • 若きスターロイス・ルイスが左ハムストリングの故障で離脱中

と、攻撃陣が精彩を欠き、1試合平均得点はわずか3.54点。これでは中堅レベルの投手陣がどれだけ粘っても勝つのは難しい。
さらに、開幕投手パブロ・ロペスも右ハムストリングの張りで離脱しており、踏んだり蹴ったりの展開となっている。

4位:ロイヤルズ(-17.4ポイント)

開幕時:42.5% → 現在:25.1%

驚くべきことに、ツインズよりも得点力が低いチームが同地区に存在する――それがロイヤルズだ。

最下位のホワイトソックスではなく、2024年に86勝を挙げて約10年ぶりにプレーオフ進出を果たしたロイヤルズが、今季はわずか71得点(24試合)・12本塁打・1試合平均2.96点と、MLBワーストの貧打線に陥っている。

  • 唯一好調なのはボビー・ウィット Jr.(OPS.853)
  • それ以外の全打者(プレート出場経験者全員)の合計OPSは.554(769打席中)

という、極端な“一人チーム状態”。

投手陣は比較的健闘しているものの、これだけ打てなければ勝てるはずもなく、ロイヤルズはここまで10勝14敗と失速。2024年の成功から一転、厳しい現実に直面している。

5位:レイズ(-15.0ポイント)

開幕時:37.7% → 現在:22.7%

2024年のトレード期限で主力を放出したにもかかわらず、2025年のレイズはプレーオフ争いに食い込むつもりで開幕を迎えた。

  • エースシェーン・マクラナハンがトミー・ジョン手術から復帰予定
  • 若手有望株ジュニオール・カミネロらの台頭にも期待

と、ポジティブな材料はあった。

だが現実は厳しく、マクラナハンは開幕前に左前腕の神経障害で再離脱。チームもここまで10勝14敗と負け越し。得失点差は+5と決して内容が悪いわけではないが、勝ち切れない試合が続いている。

好材料といえば

  • ジョナサン・アランダ
  • キャメロン・ミズナー
  • ドリュー・ラスムッセン
  • シェーン・バズ

といった新戦力が光る場面もあった。

しかし同時に、以下のような2024年からの主力選手たちの不振が響いている:

  • ヤンディ・ディアス
  • ブランドン・ラウ
  • ライアン・ペピオ
  • タジ・ブラッドリー

さらに、俊足プロスペクトのチャンドラー・シンプソンがチームに勢いをもたらす可能性はあるが、現状では「点が取れず、試合を落とす」パターンが多く、改善すべき課題が多い前半戦となっている。

トーマス・ハリガン:MLB.comレポーター
引用元:mlb.com

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