スコッツデール(アリゾナ州)発 — メジャーリーグで20シーズン目を迎えるジャスティン・バーランダーだが、今年のスプリングトレーニングでは初めての経験をすることになる。
これまでフロリダのグレープフルーツリーグで春季キャンプを過ごしてきたバーランダーにとって、アリゾナのカクタスリーグでのキャンプは今回が初めてだ。先月、ジャイアンツと1年1500万ドルの契約を結んだことで、新たな環境でシーズン準備を進めることとなった。
「まだ寂しい」新天地でのスタート
「昨日ここに着いたばかりなんだ」と、ジャイアンツの投手と捕手による最初のワークアウトが行われた水曜日、バーランダーは語った。「今はまだ孤独な感じがする。チームメートのこともよく知らないし、この環境に慣れるのが最初の課題だね」
ジャイアンツの左腕ロビー・レイ(2014年にデトロイト・タイガースでバーランダーとチームメートだった)も、彼の新しい挑戦に驚きを隠せない。
「彼がアリゾナに来たことがないなんて知らなかったよ」とレイは話す。「彼と話していて『キャメルバック・マウンテン(アリゾナの有名な山)』のことを言ったら、『山の名前は知ってるけど、どこにあるか分からない』って言ってたんだ」
新しくジャイアンツのユニフォームを着ることになったバーランダーだが、その背番号は馴染みのあるものとなる。彼はこれまでと同じ「35」を着用することを決めた。しかし、この決断は簡単なものではなかった。というのも、「35」はジャイアンツのフランチャイズの象徴的存在であるブランドン・クロフォードと深い関わりを持つ番号だったからだ。
バーランダーはジャイアンツとの契約当初、背番号をどうするか悩んでいたが、クロフォードと電話で話した際に「使ってもいい」と了承を得たことで、最終的に決断を下した。
「正しい方法で進めたかったんだ」とバーランダーは語る。「彼の許可をもらうことがとても重要だった」
「35」は幼少期の憧れの選手への敬意
バーランダーが長年「35」を背負ってきた理由は、彼の幼少期の憧れだった殿堂入りスラッガー、フランク・トーマスへの敬意によるものだ。そのため、これからも歴史的な記録に挑戦するうえで、この番号以外は考えられないという。
「(ジャイアンツの野球運営部長である)バスター・ポージーが、『ジャイアンツのユニフォームを着て300勝を達成したらすごいことじゃないか?』と言ってくれたんだ」とバーランダーは明かす。「その言葉がずっと頭の中に残っていたんだよ。それを妻と話していて、『もし本当にそうなったら?』って思ったんだ。もしそれが現実になった時、35番以外の番号を着ている自分は想像できないね」
バーランダーは2月20日で42歳を迎えるが、現在通算262勝を記録しており、300勝クラブに入る現実的な可能性を持つ最後の投手となるかもしれない。ジャイアンツでの充実したシーズンが、この歴史的なマイルストーンへ近づく大きな一歩となるだろう。2024年に彼を悩ませた首や肩のケガを乗り越えた今、バーランダーは自身に大きな期待を寄せている。
「間違いなく、ここ数年で一番調子がいいと感じている」とバーランダーは語る。「最後に健康な状態でシーズンに入れたのは2022年だった。その後の数年は、本当に“痛い目”を見てきた。でも今はいい感じだ」
バーランダーは昨シーズン、アストロズで17試合に先発し、防御率5.48とキャリア最悪の成績を残した。しかし、わずか2年前の2022年には、18勝4敗、防御率1.75(175イニング)を記録し、通算3度目のサイ・ヤング賞を受賞している。
彼は最近のケガの経験から多くを学び、それを活かして今年再び健康な状態で結果を残せるよう調整を重ねてきたという。
「メカニカルな問題を修正しようとしても、体が思うように動かず、ほとんど不可能だった」とバーランダーは語る。「でも今は、自分が理想とする動きができるようになってきた。その変化がマウンドでどう表れるのか、とても楽しみだ。ブルペンでの投球練習でも素晴らしい感触を得ているし、ここ数年で最も楽観的な気持ちになっている」
バーランダーはオフシーズンのブルペンで最速92マイル(約148キロ)を記録し、直近の投球練習では50球を投げても良い感触があったという。彼は今季、ローガン・ウェブやロビー・レイとともにジャイアンツの先発ローテーションの柱となることが期待されている。さらに、ジョーダン・ヒックス、カイル・ハリソン、ヘイデン・バードソング、ランデン・ループといった若手投手たちの指導役としての貢献も期待されている。
「彼は“時の流れ”を超越し、長年にわたって結果を残してきた特別な存在だ」とボブ・メルビン監督は語る。「彼の自信や実績を考えれば、それも納得できる。昨年も健康なときは非常に良い投球を見せていた。我々は彼に大きく期待しているし、彼自身もその重要性を理解している」
マリア・グアルダード:MLB.comジャイアンツ担当
引用元:mlb.com