ドジャース・山本由伸がサイ・ヤング候補となる3つの理由


メジャーリーグ屈指の支配的な投手が、金曜日夜のパイレーツ対ドジャースのシリーズ初戦でマウンドに上がる――しかもポール・スキーンズもだ。

もちろん冗談だ。スキーンズも間違いなく支配的な投手だ。だが現地金曜日に彼と対戦する山本由伸は、現時点でサイ・ヤング賞の最有力候補といえるほどの投球を見せている。ドジャー・スタジアムで行われるこのスキーンズ対山本の対決は、今もっとも勢いのある二人の投手による白熱の投げ合いとなりそうだ。


山本由伸は現在、ナ・リーグトップの防御率0.93を誇っている。29イニングで38奪三振。
まさに、3年連続で日本の沢村賞を受賞し、3億2500万ドルの契約を勝ち取ったエースにふさわしい投球を見せている。

ここでは、メジャー2年目のシーズンで山本が飛躍した3つの鍵を紹介する。

1) スプリッターが“本物のエース球”になった

ポール・スキーンズには“スプランカー(スプリッター+シンカー)”があるが、今季の山本のスプリッターはそれすらも上回るレベルに到達している。

昨年も十分に良いボールだったが、今年はまったく別次元。実際、今シーズンMLB全体で最も高い価値を生んでいるスプリッターとなっており、打者がまともに打つことがほぼ不可能な球種になっている。

まず何よりも、山本由伸のスプリッターに対してバッターがスイングした際、5割以上が空振りになっている。これは、2025年シーズンで1つの球種に対する空振り率として先発投手トップクラスの数字だ。

▼【2025年 1球種に対して空振り率50%以上の先発投手】
※対象:その球種に対して50スイング以上

  • ランデン・ループ(カーブ): 57%
  • マックス・メイヤー(スライダー): 54%
  • クリストファー・サンチェス(チェンジアップ): 53%
  • ジャック・フラハティ(ナックルカーブ): 52%
  • 山本由伸(スプリッター): 51%
  • ハンター・グリーン(スライダー): 51%
  • ローガン・ギルバート(スプリッター): 50%
  • リース・オルソン(チェンジアップ): 50%

さらに驚くべきことに、たとえスプリッターにバットを当てても、打球はほぼすべてゴロになっている。

  • 山本のスプリッターに対してインプレーになった19球のうち18球がゴロ(ゴロ率95%!)
  • スプリッターに対する平均打球角度はマイナス19度(つまり鋭いゴロ)

つまり、空振りするか、ゴロを打たされるか――どちらにしても、打者には勝ち目がない球になっている。

▼【2025年 1球種に対する平均打球角度ワースト(低角度)TOP5】
※対象:その球種に対してインプレー打球が15本以上

  • 山本由伸(スプリッター):-19度
  • J.T.ギン(シンカー):-12度
  • ブライアン・ウー(シンカー):-11度
  • スペンサー・シュウェレンバック(シンカー):-9度
  • タイワン・ウォーカー(スプリッター):-8度

今季、スプリッターで打者を圧倒している山本は、スプリッターの投球割合も増加させている。

  • 2024年は使用率25%未満だったが
  • 2025年は30%超えにアップ!

しかし――山本が進化させたのはスプリッターだけではない。続くポイントで、それ以外の武器についても紹介される。


2) すべての球種が「少しずつ」良くなっている

実際、山本由伸のボールは全体的にレベルアップしている。山本は、右打者・左打者の両方に対して以下の4球種を投げ分けている:

  • フォーシーム(ストレート)
  • スプリッター
  • カーブ
  • カッター

そしてこれらすべての球種で、

  • 球速が上がっている
  • 変化量が増している
    あるいはその両方が向上しているのだ。

つまり、スプリッターだけでなく、ストレート・カーブ・カッターも全体的にレベルアップしており、バッターにとって攻略がますます困難になっている。

フォーシーム(ストレート)

山本のストレートは、「ライス(rise)」=ホップ成分が増している。

  • 2024年:誘導された上方向の変化量(ライス)16インチ
  • 2025年:17インチに向上

※「ライス」とはボールの自然な落下に対して、スピンによりどれだけ落下を抑えたかを示す指標。つまり、より沈まないストレート=打者から浮き上がって見えるストレートになっており、フォーシームとして非常に理想的な改善となっている。

スプリッター

山本は、2024年ポストシーズンに向けてスプリッターを改良し始めた。

  • 球速を上げる
  • リリースポイント(腕の角度)を低くする
    という変更により、横方向の変化(アームサイドラン)が増した。

そしてその変化は、2025年レギュラーシーズンでも継続中。

✅ スプリッターの現在の平均球速:91.4マイル(約147km/h)(昨年レギュラーシーズンより約1マイル速くなっている)
✅ 落差(縦方向の変化量)は前年とほぼ同じ
✅ リリース時の腕の角度は41度(昨年より数度低い)

その結果、

  • アームサイド方向への横変化が3インチ増加
  • 平均で12インチの横変化を記録

つまり、速くなったにもかかわらず、より曲がりながら沈むスプリッターになり、打者にとってはさらに厄介なボールへと進化している。

カーブ

山本のカーブは、大きな縦変化で「虹のような弧」を描く、非常に見応えのある球だ。そして今季、その縦の落差がさらに増している。

  • 昨年よりも約1インチ多く落ちるようになり、
  • グラブサイド方向(左方向)にも約0.5インチ追加で曲がるようになった。

現在、山本のカーブは――
✅ リリースから打者までに64インチ(約162cm)も落下
✅ 同じ球速・リリースポイントのカーブと比べて、8インチ以上も多く落ちる
MLB右投手の中で最高の落差(チームメイトのグラスナウを上回る)

つまり、メジャーでも屈指の超絶落差カーブとなっている。

カッター

山本にとってカッターは、

  • ストレート
  • スプリッター
  • カーブ

に次ぐ「第4の球種」だが、左右両打者への攻めに使える重要な武器となっている。(※シンカーやスライダーは基本的に右打者専用)

このカッターも進化しており――

  • 球速は91マイル(約146km/h)(96マイルのストレートと86マイルのスライダーの中間)
  • 今年はカット成分(横滑り)が3インチ増加

昨年は横変化2インチ程度だったが、今年は5インチまで増え、同じレンジのカッターと比べても3インチ多く曲がっている。

つまり、カッターもまた、よりキレが増し、打者にとって見極めが難しいボールに進化している、というわけだ。


3) すべての球種を「狙った場所」に投げ分けている

そして、山本由伸がサイ・ヤング賞級のブレイクを果たしている最後の要素が――「コマンド(制球力)」だ。

今季の山本は、

  • すべての球種を
  • 意図を持って、狙ったゾーンに投げ分けている

つまり単にボールが良いだけではなく、ストレートもスプリッターもカーブもカッターも、すべてが精密にコントロールされている。これにより、打者は球種だけでなくコースの読みも難しくなり、ますます攻略が困難になっている。

例えば、山本のフォーシーム(ストレート)は、ストライクゾーンの左右ギリギリを正確に突く。

  • ストレートがプレートの左右端に決まる割合は37%
  • これは、100球以上ストレートを投げた119投手中トップの数字!

これにより、

  • 打者がスプリッターを警戒している時に、
  • ストレートを見逃し三振させることができる。
    実際、山本のフォーシームによる9個の三振のうち6個が見逃し三振だ。

スプリッターについても同様に、

  • バッターの手元で急落させる(「テーブルから落ちる」動き)こともできるし、
  • 左打者には低め外角、右打者には低め内角に狙って投げ込むこともできる。

通常、スプリッターは空振りを誘うボール(chase pitch)として投げるが、必要に応じてストライクゾーン内にも入れられるため、

  • フォーシームと見分けがつきにくく、
  • バッターは振るのを我慢できない。

だから、山本のスプリッターは2025年に最も三振を奪っている球種の1つになっている。

▼【2025年 シングルピッチ最多奪三振数】

  • マックス・メイヤーのスライダー:33個
  • カルロス・ロドンのスライダー:26個
  • クリス・セールのスライダー:21個
  • ローガン・ギルバートのスプリッター:21個
  • 山本由伸のスプリッター:20個
  • ランデン・ループのカーブ:20個

山本の最大の武器は、やはり「ストレートとスプリッターのコンビネーション」だ。これによって彼は打者を圧倒している。

しかし――

  • カーブ
  • スライダー
  • シンカー
  • カッター

これらも絶妙に織り交ぜて使うことで、山本由伸は「完全な投手」となっている。

つまり、単に速い・落ちるだけではなく、球種の幅・コースの使い分け・タイミング外しすべてを兼ね備えた、真のエースになっている、というわけです。

右打者に対して、山本由伸は6球種すべてを駆使してストライクゾーンを攻める。

  • フォーシーム:外角高めにズバッと
  • シンカー:内角低めに食い込ませる
  • カッター/スライダー:外角低めに逃げる球で打ち取る
  • カーブ/スプリッター:低めに落として空振りまたは打ち損じを誘う

といった具合だ。

左打者に対しては、主にフォーシームとスプリッターの2球種コンボで攻め立てる。

  • フォーシーム:外角高めにズドンと投げ込み、
  • スプリッター:その直下に沈めて空振りを取る、殺人的なコンビネーションを展開する。

さらに、

  • 同じ外角ゾーンにカーブをふわっと落とすか、
  • カッターを内角に食い込ませる

という選択肢も織り交ぜ、打者を翻弄している。

つまり、山本由伸は右打者・左打者それぞれに対して、最適な組み立て方を自在に使い分けられる、超一流のピッチングマスターになっている、というわけです。

2025年の山本由伸は、

  • 球質(ストレート・変化球すべて)がさらに向上し
  • コマンド(制球力)もさらに磨かれ
  • そして何より、メジャー屈指の魔球(スプリッター)を武器にしている。

まさに、日本で「最強」と呼ばれたあのピッチャーが、今、MLBでも真のエースに成長している。

既にサワムラ賞(沢村賞)を3度受賞した男が、今度はMLBでもサイ・ヤング賞を獲得するかもしれない――そんな期待が高まるシーズンとなっている。

デビッド・アドラー:MLB.com記者
引用元:mlb.com

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