毎シーズン、新たな顔ぶれがMLBのエリート選手の仲間入りを果たす中、2025年のトップ成績を争うのは、いつもの常連選手だけではないことは明らかだ。
では、どのようなサプライズが今シーズンを彩るのか? それを探るため、MLB.comの5人のライターが、各カテゴリーでダークホースとなり得る成績リーダーを1人の打者と1人の投手ずつ指名した。
打者
1. 本塁打:オニール・クルーズ(パイレーツ/外野手)
2024年本塁打数:21本
クルーズにとって2024年の本塁打数はキャリア最高だったが、彼のスイングの強さを考えれば、毎年40本以上を狙えるはずだ。
昨シーズンのクルーズの平均スイング速度は78.6マイルで、リーグで2番目に速かった(1位はジャンカルロ・スタントン)。また、スイング速度が75マイル以上に達した割合(75.6%)は、スタントン、カイル・シュワーバーに次ぐリーグ3位で、アーロン・ジャッジ(75.1%)をわずかに上回った。
さらに、クルーズは以下の部門でリーグの上位5%(95パーセンタイル)以上にランクインしている。
- バレル率(15.7%)
- ハードヒット率(54.9%)
- 平均打球速度(95.5マイル)
この3つの指標でクルーズと同等の数値を記録したのは、スタントン、シュワーバー、ジャッジ、フアン・ソト、大谷翔平の5人だけだった。そしてこの5人は、いずれも昨シーズンの「1本塁打を打つまでの打席数(AB/HR)」でトップ10入りしている(最低400打席)。
つまり、「強くスイングし、理想的なコンタクトをすれば、本塁打が増える」というシンプルな理論に当てはまる。
しかし、クルーズの昨シーズンのAB/HR(25.76)は、規定打席到達者の中で78位だった。問題は何だったのか? 一目で分かる課題は、彼のゴロ率(48.1%)がリーグ平均(44.4%)を大きく上回っていたことだ。この指標が40%を超えていたのは、前述の5人の中ではソトのみだった。
クルーズは並外れた身体能力を持ち、それをバットスピードにしっかりと伝えられる選手だ。少しの調整で、本塁打王のタイトルを狙うことができるだろう。
— ブライアン・マーフィー
2. 打率:ジャクソン・チョーリオ(ブリュワーズ/外野手)
2024年打率:.275
チョーリオは、メジャーでのプレー経験がないまま、ブリュワーズと8年総額8200万ドルの契約延長を結んだ。昨シーズン、開幕戦でメジャーデビューを果たし、大きな期待を背負っていたが、最初の51試合では打率.207、出塁率.251、長打率.323と苦しんだ。
しかし、その後は調子を取り戻し、残り97試合では打率.305、16本塁打、OPS.888を記録。ナ・リーグ新人王投票では3位に入った。この成績は決して偶然ではなく、多くの重要な部分で成長を見せた。具体的には、ボール球のスイングを減らし、三振の数を抑え、コンタクトの質を向上させたことが要因だ。
彼の圧倒的なスピード、向上したバットコントロール、広角に打ち分ける打撃スタイルを考えると、今後何年も首位打者争いに絡む可能性がある。21歳シーズンを迎える彼のポテンシャルは計り知れない。
— トーマス・ハリガン
3. OPS:ジュニオール・カミネロ(レイズ/三塁手)
2024年OPS:.723
ア・リーグのOPS王争いには、アーロン・ジャッジ、ボビー・ウィットJr.、ヨルダン・アルバレス、ブラディミール・ゲレーロJr.といった強力なライバルが名を連ねている。その中であえて高い目標を掲げるならば、カミネロの打撃のポテンシャルは計り知れない。
昨シーズン終盤、MLBパイプラインの「トップ100プロスペクト」ランキングで一時的に1位に輝き、その後、正式にプロスペクト資格を卒業したカミネロは、レイズの選手やコーチ、フロント陣を驚かせる打撃能力を持つ(彼がビジターとしての打撃練習中にスタンディングオベーションを受けたこともあるほどだ)。
「彼ほど一貫して強い打球を打てる選手を見たことがない」
— 打撃コーチ、チャド・モットーラ
「彼がボールを捉えたときのインパクトは特別なものがある」
— 野球運営部門代表、エリック・ニーアンダー
「彼のバットから飛び出す打球の勢いは驚異的だ」
— 監督、ケヴィン・キャッシュ
カミネロはマイナーリーグでOPS.921を記録し、常に自分より年上の選手が多い環境で活躍してきた。そして昨シーズンは、メジャー全体で3番目に若い打者ながら、一定の成績を残した。2025年、レイズは彼を打線の中軸として期待しており、大きな飛躍を遂げる可能性がある。
— アンドリュー・サイモン
4. WAR:コービン・キャロル(ダイヤモンドバックス/外野手)
2024年WAR:4.0(FanGraphs)/3.4(Baseball Reference)
オールラウンドな活躍ができる選手を挙げるとすれば、キャロルの名前は間違いなく候補に入る。彼はエリート級のスピードを持ち、それが外野守備で広範囲をカバーする助けとなっている。また、そのスピードと走塁技術を活かし、Statcastによると2023年と2024年の両シーズンでMLBで最も価値のある走者となった。彼の価値は盗塁数だけでなく、塁上での優れた走塁判断にも表れている。
2024年の打撃成績は2023年ほど生産的ではなかったものの、彼が本来持っている打撃力は証明済みであり、再びそのフォームを取り戻せるはずだ。実際、2023年のキャロルは打撃得点価値(batting run value)でリーグの上位5%(95パーセンタイル)に入っていた。
ゲームのあらゆる面で高いレベルを維持することは、WARを積み上げる上で大きなアドバンテージとなる。キャロルはその条件を満たす絶好の候補だ。
— サラ・ラングス
5. 盗塁:ギャレット・ミッチェル(ブリュワーズ/外野手)
2024年盗塁数:11
ミッチェルは、将来的に盗塁王を獲得する有力候補の一人だ。彼は出塁率が高く、さらに走力も申し分ない(2024年の平均スプリントスピードは29.5フィート/秒)。つまり、能力面での問題はない。
ブルワーズは昨シーズン、**217盗塁(MLB2位、1位はナショナルズの223盗塁)**を記録し、**走塁の得点価値(run value)でもリーグトップ(+18点)**だった。そのため、チームの戦略が大きく変わるとは考えにくい。また、この217盗塁のうち、ブライス・トゥーラングが50盗塁を決めていることを考えると、ミルウォーキーのコーチ陣は若手選手にも積極的に盗塁のチャンスを与える方針であることが分かる。
ただし、ここで課題もある。ミッチェルはプロ入り後、1シーズンで69試合以上出場したことがない。彼がこのキャリア最多試合数を記録したのは2024年であり、新ルールの影響で2022-23年に盗塁数が約30%増加する中、彼は11盗塁を決めた。一方で、まだ彼の上限( ceiling )がどこにあるのか分からない。その未知数な部分が、今後の盗塁数を大きく左右することになるだろう。
— シャンティ・セペ・チェプル
投手
1. WAR:サンディ・アルカンタラ(マーリンズ/右投手)
2024年WAR:N/A(未出場)
アルカンタラが戻ってきた。本当に、完全復活だ。2024年シーズンはトミー・ジョン手術のリハビリのため全休したが、今春のオープン戦初登板では、すでに99マイルの速球を投げ込んでいる。
マーリンズの開幕投手を務める彼は、手術から約17カ月が経過し、完全に健康を取り戻した。2025年シーズンに制限なくプレーできるのであれば、MLBのWARリーダー争いに本気で名乗りを上げることになる。2022年にナ・リーグのサイ・ヤング賞を受賞した際は、**fWAR5.9(MLB4位)**を記録し、2021-23年の累計WAR13.2はMLB全体で6位タイだった。
FanGraphsのDepth Chartsでは、アルカンタラの2025年のWARを3.5と予測している。しかし、もし手術前の「200イニング以上を投げ、防御率3.14を記録するワークホース」が本当に戻ってきたのなら、この予測は控えめすぎるものになるだろう。
— ブライアン・マーフィー
2. 防御率:ハンター・ブラウン(アストロズ/右投手)
2024年防御率:3.49
2023年の新人シーズンでは防御率5.00超と苦しんだブラウンだが、2024年も序盤は同じような展開になりかけていた。開幕から9試合の先発で防御率7.71と不振に陥ったものの、5月に球種を調整し、フォーシームとカッターに加えてシンカーを導入したことで状況が一変した。
その後の22試合では、防御率2.31、138奪三振、39四球(K/BB比3.54)、132回2/3を投げる好成績を記録。この期間中、ブラウンはMLB全体で「速球の得点価値(fastball run value)」トップ(+24)を記録しており、シーズン序盤の9試合で記録した-11とは大きな違いを見せた。
また、2024年シーズンを通して、ブラウンの許したハードヒット率(最低300打球対象)は30.3%でMLBトップタイとなり、2023年の44.4%(リーグ下位13パーセンタイル)から大幅に改善された。その大きな要因がシンカーの導入であり、シンカーによる被打球109本のうち、95マイル以上のハードヒットと分類されたのはわずか11本(11.9%)にとどまった。
この改善を2025年も継続できれば、MLBの防御率王争いに本格的に加わる可能性がある。
— トーマス・ハリガン
3. 奪三振:スペンサー・シュウェレンバッハ(ブレーブス/右投手)
2024年奪三振数:127(投球回数123回2/3)
2023年、ブレーブスの若手右腕が、ルーキーイヤーの好成績を足掛かりに、メジャー最多奪三振(さらに最多勝、FIPトップ)を記録した。それがスペンサー・ストライダーだった。
もちろん、チーム、利き腕、年齢、経験を考慮しても、シュウェレンバッハはストライダーとは異なるタイプの投手だ。彼ほどの爆発力はないものの、2025年に奪三振王争いに絡む可能性はあるのだろうか? その道筋は確かに存在する。
奪三振数を増やすには、まず投球回数を稼ぐことが必要だ。シュウェレンバッハは2024年、マイナーとメジャーを合わせて168回2/3を投げており、2025年はブレーブスのローテーションの一角を担う見込みだ。
また、彼はストライダーのような強烈なフォーシームとスライダーのコンビネーションを持つわけではないが、フォーシーム、スライダー、カッター、カーブ、スプリッター、シンカーの6球種を操る多彩な投手だ。昨シーズンは、この6球種のうち5つで**プラスの得点価値(run value)**を記録しており、試合ごとに多様な攻め方ができる。
さらに、**打者をゾーン外の球に誘う能力はリーグ96パーセンタイル(2024年)**で、三振率(K%)もリーグ70パーセンタイルと、まだ伸びしろがある。こうした要素が組み合わされば、2025年に奪三振王争いに加わる可能性は十分にある。
— アンドリュー・サイモン
4. 勝利数:タナー・ハウク(レッドソックス/右投手)
2024年勝利数:9
勝ち星を増やすには、もちろん良い投球をすることが重要だ。しかし、それに加えてチームの強さも大きく影響する。レッドソックスは2025年にチーム全体として向上が期待されており、先発投手にとって勝ち星を稼ぐ機会も増えるはずだ。
ハウクは昨シーズン、30試合のうち27試合で5回以上を投げており、先発投手としての勝利要件を満たすことが多かった。
また、彼のスウィーパーは強力な武器であり、2024年にはこの球種で87奪三振を記録。これはソニー・グレイ(112奪三振)に次ぐリーグ2位の成績だった。このスウィーパーを軸に、彼の2番目に多く投げるシンカーを活用することで、ゴロを打たせるピッチングが期待される。
さらに、アレックス・ブレグマンのような優れた守備力を持つ三塁手が後ろにいることもプラス要素だ。堅実な守備の支えを受け、ハウクは2025年に大きく勝ち星を伸ばす可能性がある。
— サラ・ラングス
5. セーブ:ジャスティン・マルティネス(ダイヤモンドバックス/右投手)
2024年セーブ数:8
セーブは「適切な場面で、適切な役割を担う」ことで記録される指標だ。そのため、単に健康であることや、所属チームが多くの試合に勝つことだけではリーグトップに立つことはできない。たとえば、2024年にMLB最多の49セーブを記録したライアン・ヘルズリー(カージナルス/83勝)のように、圧倒的なパフォーマンスが求められる。
23歳のマルティネスは、2025年でメジャー2年目のフルシーズンを迎える。彼のルーキーイヤーの成績を見てみよう。
マルティネスの2024年パーセンタイル(リーグ内順位)
- 平均速球速度:100.3マイル(100パーセンタイル)
- 平均被打球速度:86.4マイル(94パーセンタイル)
- 空振り率:34.5%(96パーセンタイル)
- バレル率(芯で捉えられた打球の割合):2.8%(99パーセンタイル)
- ハードヒット率(95マイル以上の打球の割合):31.8%(94パーセンタイル)
- ゴロ率:60.3%(97パーセンタイル)
このデータを見ると、マルティネスにはヘルズリーに通じる要素が多いことが分かる。さらに、彼が所属するダイヤモンドバックスは2019年以降、一貫して「クローザーを固定しない体制」を取っているため、2025年の守護神争いはまだ流動的だ。
現在の予測では、マルティネスの2025年セーブ数は17と見積もられており、A.J.パクも同じ17セーブと予想されている。ダイヤモンドバックスが春季キャンプでどのようなクローザー起用を決めるのかは不透明だが、マルティネスがもう一段階成長し、チームの絶対的な抑え投手としての地位を確立できるかが鍵となるだろう。
— シャンティ・セペ・チェプル
引用元:mlb.com