ゲレーロJr.の契約がまとまったことで来年のFA市場はどうなる?

MLB ブラディミール・ゲレーロJr. ブルージェイズ

ようこそ、2025-26年のホットストーブ・シーズンへ――

えっ、もう?


そう感じるのも無理はありません。レギュラーシーズンはまだ約150試合を残していますが、日曜夜に飛び込んできた「ウラディミール・ゲレーロJr.がブルージェイズと14年総額5億ドルの契約延長に合意した」というニュースは、今オフのFA市場に大きな衝撃を与えるものでした。なにしろ、来冬のFA市場で最大の目玉と見られていた選手が一人、早くも市場から姿を消したのです。

ゲレーロJr.は、今オフにおける“今年のフアン・ソト”と目されていました。26歳にしてすでに輝かしいキャリアを積み上げ、なおもキャリアの全盛期に突入するスラッガー。今回の契約がなければ、ソトがメッツと結んだ7億6500万ドルには届かないまでも、ヤンキースやメッツなどが入札に加わっていたとすれば、6億ドル超えの可能性もあったでしょう。


これでゲレーロJr.はマーケットから姿を消し、2040年近くまでトロントにロックされることに――そんな未来を想像するだけでもクレイジーですが――来たるFA市場は、一気に“トップヘビー”感が薄れた形となりました。

その中で、今後のFA市場で最も注目される存在となったのがカイル・タッカーです。今季からカブスでプレーする外野手は、開幕から絶好調を維持しており、契約最終年のプレッシャーなど微塵も感じさせない活躍ぶりを見せています。オールスター選出3回を誇る彼は、ゲレーロより2歳年上ですが、守備や走塁を含めた総合力ではより完成された選手と評価されています。

そのため、今オフに彼が「年俸4000万ドル超 × 10年以上」の超大型契約を勝ち取る可能性も、十分に現実味を帯びてきました。


今後注目される選手たちの多くは、まだ数ヶ月先にならないと“市場に出るかどうか”が確定しません。というのも、アレックス・ブレグマン、コディ・ベリンジャー、ピート・アロンソといった主力選手の中には、2025年に好成績を収めれば、契約に含まれるオプトアウト(契約破棄)条項を行使してFA市場に戻る可能性があるからです。

中でも最も恩恵を受けそうなのが、ピート・アロンソです。もし彼が2026年の年俸2400万ドルを放棄してFA市場に出れば、「一塁手としてはトップの評価を受ける存在」となることは間違いありません。ゲレーロJr.の超大型契約が、その評価にさらに追い風を与えるでしょう。

もちろん、他にも経験豊富な強打者たちが今オフにFA市場に登場します。カイル・シュワーバー、マーセル・オズナ、J.T.リアルミュート、セドリック・マリンズ、ルイス・アラエス、エウヘニオ・スアレスといった顔ぶれです。これらの選手も各球団からオファーを受けることになるでしょうが、もしゲレーロJr.を「オフの本命ターゲット」と見ていた球団にとっては、どの選手も“プランB”としては力不足だと見なされる可能性が高いです。

ボー・ビシェットは、長年ゲレーロJr.とチームメイトを務めてきた存在ですが、2024年シーズンは非常に不調に終わりました。もし2025年に復活を果たせば、FA市場で注目株となる可能性はありますが、いずれにせよトロントに残る可能性は低いと見られています。

ゲレーロJr.の市場離脱によって最も恩恵を受けるのは、アロンソに加えて、2026年オフの先発投手陣かもしれません。攻撃面での大型ターゲットが不在となれば、各球団が資金を「先発投手の補強」に回すことが予想されるからです。

先発投手の注目株としては、ディラン・シーズ、ザック・ギャレン、マイケル・キング、フランバー・バルデスらが筆頭で、それに続いてザック・エフリン、ブランドン・ウッドラフ、レンジャー・スアレスといった実力派も控えています。さらに、ジャック・フラハティもタイガースとの契約最終年をオプトアウトすれば、3年連続のFA市場挑戦が視野に入ってきます。

また、リリーフ投手市場も活況を呈しそうです。デビン・ウィリアムズ、ライアン・ヘルズリー、ライセル・イグレシアス、ライアン・プレスリーといった実績十分のクローザーたちがFAとなる可能性があります。

なお、ゲレーロJr.がFAとなっていれば最有力の争奪戦に名乗りを上げていたとされるのが、ヤンキースとメッツのニューヨーク両球団です。ヤンキースはポール・ゴールドシュミットとの契約が1年限りで、メッツもピート・アロンソが来季終了後にオプトアウトする見込みであり、両球団とも「一塁手の空席」が再びオフシーズンの補強課題となる可能性が高いと見られています。


長い間、筆者はMLBの一塁手をNFLのランニングバックに例えてきました。つまり、「重要なポジションではあるものの、長期・高額契約を避けられがちなポジション」という意味です。

事実、フレディ・フリーマン(6年1億6200万ドル)やマット・オルソン(8年1億6800万ドル)といったトップクラスの一塁手でさえ、契約総額は1億7000万ドル未満にとどまっており、ジョーイ・ボット、アルバート・プホルス、ミゲル・カブレラ、プリンス・フィルダーといったかつてのスターたちが受け取った2億ドル超の契約は、もう当分現れないのではないかと見られていました。

しかし、ウラディミール・ゲレーロJr.は、その常識を覆しました。今回の契約(14年5億ドル保証)は、MLB史上3番目に大きな保証額となり、「一塁手に2億ドル以上は見込めない」という前提を打ち破った形です。ただし、ゲレーロJr.の年齢(26歳)とこれまでの実績を考えれば、彼が“例外的存在”であることも明らかです。

ゲレーロJr.の市場離脱後、FA市場での一塁手のトップ候補は、ピート・アロンソを除けば、ルイス・アラエス、リース・ホスキンス、ジョシュ・ネイラーといった面々が並びます。いずれも優れた打者ではあるものの、「チームの顔」として5億ドル規模の契約を託せる存在とは言い難いでしょう。

2026年、ヤンキースとメッツには必ず誰かが一塁を守ることになりますが、ゲレーロが選択肢から外れた今、両球団は「代わりの大物」を探す必要に迫られています。

マーク・ファインサンド:MLB.comレポーター
引用元:mlb.com

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