毎年シーズンが始まる前に、さまざまな予測システムがMLBのシーズンをどのように予測しているかを確認するのは興味深いものです。
Baseball ProspectusのPECOTA予測はその中でも特に注目されるもので、2025年シーズンの予測順位とプレーオフ進出確率が今週発表されました。それでは詳しく見ていきましょう。
PECOTAはシーズンを何度もシミュレーションし、各チームがどのような成績を残すかを予測します。ただし、これはあくまで統計データに基づく最も可能性の高い結果を示すものであり、シーズンの最終結果を完全に言い当てるものではありません。
2025年PECOTA予測順位の7つの注目ポイント
1) ドジャースのプレーオフ進出確率はほぼ100%
ロサンゼルス・ドジャースは圧倒的な戦力を誇り、予測でも他チームを大きく引き離しています。
まず、昨年のワールドシリーズ王者であるドジャースは今季104勝を記録すると予測されています。これは次点のブレーブス(92勝)より12勝も多いという驚異的な数値です。
PECOTAによるドジャースのプレーオフ進出確率は99.2%。ほぼすべてのシミュレーションでポストシーズンに進出する結果が出ています。
また、ワールドシリーズ優勝確率は22%で、2位のヤンキースとブレーブス(9%)を大きく上回っています。つまり、ドジャースが優勝する確率は他のどのチームよりも2倍以上高いのです。
これは、大谷翔平、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマン、ブレイク・スネル、山本由伸、タイラー・グラスナウ、佐々木朗希といったスーパースターを擁する超強力なロースターを見れば納得の結果でしょう。
2) ヤンキースとオリオールズが再びAL東地区の覇権を争う
アメリカン・リーグ王者の座を狙うヤンキースは、2025年もALのトップチームになると予測されています。ただし、その差はごくわずかです。
PECOTAはMLB全体で最も接戦となる地区がAL東になると予測しており、ヤンキースとオリオールズの激しい争いが再び繰り広げられる可能性が高いと見ています。特に、アーロン・ジャッジとガナー・ヘンダーソンがMVP候補としてチームを引っ張る展開になれば、昨年と同様に目が離せないレースになるでしょう。
2024年シーズン、ヤンキースとオリオールズは終盤まで激しい首位争いを繰り広げました。そして2025年のPECOTA予測では、ヤンキース(90勝72敗)とオリオールズ(89勝73敗)はわずか1ゲーム差となっています。この成績なら、両チームともプレーオフ進出ですが、ヤンキースが地区優勝で第1ラウンドのバイ(免除)を獲得し、オリオールズはワイルドカードシリーズからの戦いになるという昨年と同じシナリオが予想されています。
(ちなみに、より細かく見ると、ヤンキースの予測勝利数は89.7勝、オリオールズは88.9勝となっており、実際には1勝未満の差しかありません。)
3) NL東地区の三つ巴の戦い、トップはブレーブス
現在、NL東地区はMLBで最も激戦が予想される地区のひとつであり、フィリーズ、メッツ、ブレーブスの三つ巴のライバル関係が続いています。昨年はこの3チームすべてがプレーオフに進出しましたが、PECOTAの2025年予測でも再び3チームがプレーオフ入りすると見られています。
しかし、今年の地区優勝候補は意外にもアトランタ・ブレーブスです。
昨年のフィリーズは地区優勝を果たし、メッツはオフシーズン最大の補強としてフアン・ソトを獲得しました。しかし、それでもPECOTAはブレーブスがNL東を制すると予測しています。
- ブレーブス:92勝70敗(地区優勝)
- メッツ:89勝73敗(2位)
- フィリーズ:88勝74敗(3位)
アクーニャJr.とスペンサー・ストライダーが怪我から復帰し、本来のパフォーマンスを発揮できれば、アトランタには地区を奪還する戦力が十分あります。しかし、フィリーズとメッツにもスター選手が揃っており、簡単な戦いにはならないでしょう。
そのため、PECOTAはこの3チームすべてがプレーオフ進出確率2/3(約67%)以上と予測。さらに、NL東はMLBで唯一、3チームが88勝以上を記録する可能性がある地区とされています。
4) 2023年の王者が復活
レンジャーズは2023年にワールドシリーズ優勝を果たしましたが、2024年はプレーオフを逃す失速を見せました。しかし、PECOTAの2025年予測では再びプレーオフ進出を果たすとされています。
レンジャーズは、ヤンキースに次ぐアメリカン・リーグ2位の強豪として評価されており、予測勝利数は89勝。これはALではヤンキース(90勝)に次ぐ成績となります。
さらに、PECOTAはAL西地区(AL West)から3チームがプレーオフ進出すると予測。
- レンジャーズ(89勝73敗)=地区優勝
- アストロズ(87勝75敗)=ワイルドカード進出
- マリナーズ(86勝76敗)=ワイルドカード進出
2025年にポストシーズン進出するチームの中で、最も大きな勝利数の増加を見せるのがレンジャーズ。
2024年の78勝84敗(勝率.481)から、11勝増やし、16ゲーム貯金を作る計算になります。
この予測は決して荒唐無稽ではありません。
- 打線には実績十分なスター選手(コーリー・シーガー、マーカス・セミエン、アドリス・ガルシア)
- 将来有望な若手(ワイアット・ラングフォード、ジョシュ・ヤング、エバン・カーター)
- 先発ローテーションにはネイサン・イオバルディとジェイコブ・デグロム
特に、アドリス・ガルシアが復調し、デグロムが健康を維持できれば、レンジャーズはALの優勝争いに加わる強豪となる可能性が高いでしょう。
5) カブスがブリュワーズの王座を奪う
2024年にナ・リーグ中地区(NL Central)を制したのはブリュワーズであり、過去4年間で3度の地区優勝を果たしました。しかし、PECOTAの予測では2025年はカブスの時代になるとされています。
カブスは2020年以来の地区優勝を果たし、さらにフルシーズン(162試合制)での地区優勝は2017年以来となる見込みです。
PECOTAの予測によると、
- カブスは91勝を挙げ、MLB全体で3番目の勝率(ドジャース、ブレーブスに次ぐ)
- ワールドシリーズ制覇の確率も8%と、ドジャース・ヤンキース・ブレーブスに次ぐ4番目
カブスは昨シーズン、ブリュワーズに10ゲーム差をつけられた(カブス82勝80敗、ブリュワーズ92勝70敗)ものの、
2025年にはブリュワーズに対して11ゲーム上回る予測となっており、地区の勢力図が大きく変わる可能性があります。
この変革の中心にいるのが、新たなスター選手となるカイル・タッカー。
2025年のカブスは、カイル・タッカーを筆頭に、若手とベテランが融合した強力な戦力を誇り、ついにナ・リーグ中地区の覇権を奪うチャンスを迎えています。
6) 2024年のプレーオフ進出チームが全てAL中地区優勝を逃す
2024年のア・リーグ中地区(AL Central)は驚きの展開となり、
ガーディアンズ、ロイヤルズ、タイガースの3チームがプレーオフに進出しました。
しかし、PECOTAの2025年予測では、この3チームはすべてプレーオフを逃すとされています。
代わりにAL中地区を制すると予想されているのは、ミネソタ・ツインズ。
ツインズは86勝で地区優勝すると見込まれており、他の3チームは**ほぼ5割の成績(ロイヤルズ81勝、ガーディアンズ80勝、タイガース80勝)**でプレーオフを逃す予想となっています。
これは少し意外な結果です。
- ロイヤルズとタイガースは成長途上で、戦力が充実している
- ガーディアンズは2024年の地区チャンピオン
しかし、ツインズは2023年にAL中地区を制覇し、2024年もシーズン終盤までプレーオフ圏内にいたものの、9月の失速でワイルドカード争いから脱落しました。
2025年は、その悔しさをバネに地区優勝を取り戻すシーズンとなるかもしれません。
7) Dバックスがプレーオフ進出、パドレスは脱落
パドレスは2024年のプレーオフでドジャースを追い詰めたチームでした。
ナ・リーグ地区シリーズ(NLDS)では2勝1敗とリードし、ドジャースをあと一歩で敗退に追いやるところまで追い込みました。
しかし、ドジャースがシリーズを逆転勝利し、パドレスは惜しくも敗退しました。
そんなパドレスですが、2025年はプレーオフ進出を逃すとPECOTAは予測しています。
82勝の成績と予想され、ポストシーズンに届かない見込みです。
これは意外な結果かもしれません。
フェルナンド・タティスJr.、マニー・マチャド、ルイス・アラエス、ザンダー・ボガーツ、ジャクソン・メリルといったスター選手が並ぶ強力打線を擁し、先発ローテーションにはディラン・シース、マイケル・キング、ダルビッシュ有といった実力派投手が揃っています。
一方で、2023年にドジャースをプレーオフで撃破し、ナ・リーグ優勝を果たしたダイヤモンドバックス(Dバックス)は、2025年にプレーオフ復帰を果たすと予想されています。
87勝でワイルドカード枠に入る見込みで、パドレスを上回り、再びポストシーズンの舞台に戻ると見られています。
アリゾナも優れた戦力を擁しています。
ザック・ギャレンとコービン・バーンズという2人のエースがおり、打線にもケテル・マルテとコービン・キャロルというトップクラスのコンビが揃っています。
特にキャロルが2023年のレベルに戻ることができれば、非常に強力な布陣となるでしょう。
今シーズン、Dバックスとパドレスのどちらがドジャースに挑戦できるのか、または両チームとも台頭するのかが注目されます。
デビッド・アドラー:MLB.com記者
引用元:mlb.com