ピッツバーグ発 —メジャーリーグには、スタットキャスト(Statcast)という最先端のデータ計測技術にぴったりな選手が何人か存在します。パイレーツの外野手オニール・クルーズは、その代表格のひとりであることを、これまで何度も証明してきました。
そして日曜午後、クルーズはその驚異的な身体能力をさらに一歩先へと進めました。スタットキャストが導入されて10年の歴史の中で、誰も成し遂げたことのない記録を達成したのです。
26歳のクルーズは、時速122.9マイル(約197.8km/h)の打球速度で、スタットキャスト史上最速となる打球を記録。相手はブリュワーズのローガン・ヘンダーソン、胸元付近のフォーシーム(直球)を完璧に捉えました。打球は右中間のフェンスをあっさり越え、推定飛距離は432フィート(約131.7メートル)。そしてバッターボックスを離れる前には、打球はすでにアレゲーニー川にワンバウンドで飛び込んでいました。
「すごく気持ちよかったよ。いい球を待ってて、それをうまく捉えることができた」と、クルーズは通訳でありアシスタントコーチのスティーブン・モラレスを通じて語りました。
「それがスタットキャストの歴史上で最も速い打球だったって知って、さらにうれしいね。」
この一発はクルーズにとって今季11号となる本塁打で、PNCパーク開場(2001年)以来83本目の“川ポチャ弾”。なお、クルーズ自身が川に打ち込んだのはキャリア6度目のことです。
「打球速度は気にしてないんだ。ただいいコンタクトを心がけてるだけ」とクルーズは話します。
「最強のスイングを狙ってるわけじゃない。むしろ、ボールをちゃんと打ち返すことが大事なんだ。」
クルーズは今回の本塁打によって、自身が保持していたスタットキャスト史上最速打球の記録を更新しました。これまでの記録は、2022年8月24日にピッツバーグで外野フェンス直撃の安打として放った時速122.4マイル(約197.0km/h)の打球でした。
さらに今回の一発は、これまでの“最速本塁打”の記録も塗り替えました。従来の記録は、ヤンキースの指名打者ジャンカルロ・スタントンが2018年8月9日に放った時速121.7マイル(約195.9km/h)の本塁打でした。
パイレーツ先発のベイリー・ファルターは、あまりの出来事の早さに、最初は何が起きたのかわからなかったと話します。
「最初、ファウルだと思ったんだ。彼(クルーズ)がその場に立ち尽くしてたからさ」とファルターは語りました。
「それでスコアボードを見上げたら、“時速122.9マイルでアレゲーニー川まで飛ばした”って表示されてて。あれは本当にすごかった。
あんなに強く打たれた打球、人生で一度も見たことがないよ。クルーズが“乗ってる”ときは手がつけられない。見ていて楽しいし、ただただ圧倒される。」
ファルターや内野手のアダム・フレイジャーも、クルーズの規格外のパワーにただただ驚くばかりであり、同時に観客の安全が守られていてよかったと胸をなでおろしていました。というのも、クルーズはMLB全体でバットスピード、ハードヒット率、バレル率、平均打球速度のすべてで100パーセンタイルという驚異の数値を誇っており、観客の身の安全を考えるのも無理はありません。
「彼が打席に立つたびに、何か特別なことが起きるかもしれないよ」と、フレイジャーは語りました。
この花火のような一発は、クルーズにとってホームスタンドの締めくくりとしてこれ以上ない場面となりました。クルーズはこのシリーズで16打数6安打、3本塁打、5打点、二塁打1本、三塁打1本という好成績を残し、打率.236、OPS.853、18盗塁(MLB全体で3位)にまで成績を伸ばしました。
「彼の活躍については語り尽くせないよ」と、パイレーツの暫定監督ドン・ケリーは語りました。
「このシリーズではホームランに三塁打、さらに右中間でのスーパーキャッチもあった。本当に難しそうな打球だったけど、素晴らしいプレーだった。
彼はいま、本当にすごいことをやってのけてるよ。」
ONEIL CRUZ
— Sarah Langs (@SlangsOnSports) May 25, 2025
Hardest-hit batted balls under Statcast (2015):
5/25/25 Oneil Cruz: 122.9 mph
8/24/22 Oneil Cruz: 122.4 mph
8/9/21 Giancarlo Stanton: 122.2 mph
10/1/17 Giancarlo Stanton: 122.2 mph
8/9/18 Giancarlo Stanton: 121.7 mph
5/21/24 Oneil Cruz: 121.5 mph https://t.co/jj8s1l05fO
クルーズが打撃で“乗っている”とき、彼にはピッツバーグの攻撃全体をまったく別のレベルに引き上げる力がある――パイレーツのドン・ケリー監督はそう確信しています。今季ここまで、パイレーツ打線は“成長痛”を多く抱えてきました。チーム打率.224はMLB全体でワースト5以内と低迷していますが、4勝3敗で終えた今カードのホームシリーズを経て、「チームはひとつの転機を迎えているかもしれない」と指揮官は前向きに捉えています。
今季、パイレーツが攻撃面で何らかの成果を挙げるとすれば、それはおそらくメジャー5年目のオニール・クルーズが中心となって牽引する展開になるだろうと見られています。
「まさに“スーパースター級の存在感”だよ」とケリー監督は言います。
「今日の試合についてだけ見れば、たしかにフラストレーションの溜まる内容だった。でも、このホームスタンド全体を振り返れば、非常に良かったと思ってる。この試合に入る時点で、我々は非常にいい流れを持っていた。今日の敗戦は悔しいけど、それでもポジティブな要素もたくさんあった。選手たちは粘り強く戦い続けていたし、クルーズがそれを支える大きな柱になっていた。それに、彼の活躍はチームに“伝染”してるんだ。 他の選手たちも、明らかに良い打席内容を見せ始めてるよ。」
引用元:mlb.com