スプリングトレーニングレビュー 注目の12選手をピックアップ

スプリングトレーニングは公式戦ではないが、毎年最初のStatcastデータが得られる時期でもあり、その価値は十分にある。

ここでは、今春の注目すべき数値を見ていこう。打球を強く打ち返している打者、圧倒的な投球を見せている投手、そして頭角を現しつつある若手選手たちをチェックしてみる。


目次

2025年スプリングトレーニング第1週のStatcast注目選手12名

1) クリス・ブライアント(ロッキーズ)
111.8マイル(約180キロ)、462フィート(約141メートル)の本塁打(火曜日)

元MVPのブライアントが、ホワイトソックス戦で左中間に放ったホームランは、彼にとって久しぶりに強烈なスイングとなった。ブライアントがレギュラーシーズンで110マイル(約177キロ)以上の打球を記録したのは2021年が最後で、これほどの打球速度のホームランを放ったのは2019年以来のことだった。

実際、ブライアントがこれまでのキャリアで今回のスプリングトレーニングでの特大弾よりも強く打った打球は、わずか3本しかない。それらはすべて、カブス時代の2016年と2017年に放った本塁打だ。また、今回の462フィート(約141メートル)よりも飛距離のある本塁打も、過去にわずか2本しか記録していない。


2) ジャック・カリアニョーネ(ロイヤルズ)
115.4マイル(約185.7km/h)、435フィート(約132.6m)の本塁打(2月23日)

    カリアニョーネは、ロイヤルズのトッププロスペクトとして評価されるエリート級のパワーを早速披露した。メジャー初のスプリングトレーニング2試合目で、打球速度115.4マイルの本塁打を放った。


    2024年シーズンに115マイル(約185.1km/h)以上の本塁打を打ったメジャーリーガーはわずか15人しかいなかったが、カリアニョーネはスプリングトレーニングでそのレベルの一撃を放った。

    さらに、ロイヤルズの選手が放った本塁打の中で、Statcastが記録を開始した2015年以降で3番目に速い打球速度となった。彼より上にいるのはホルヘ・ソレアとケンドリス・モラレスの2人のみで、22歳のカリアニョーネはすでに球団史に残るパワーを示している。

    3) コービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)
    時速104.1マイル(約167.5km/h)、107.5マイル(約173.0km/h)、110.1マイル(約177.2km/h)の本塁打を4試合で記録

    昨シーズン後半にスイング調整を行い、パワーを引き出す形を見つけたキャロルは、スプリングトレーニングでもその勢いを維持している。

    カクタスリーグの最初の4試合で時速100マイル(約161km/h)以上の本塁打を3本放っており、その中でも2月26日のブルワーズ戦では110.1マイルのグランドスラムを記録。昨年からの打撃向上がすでに結果として表れている。


    この本塁打が特に注目されるのは、キャロルのメジャーキャリアにおいて最も打球速度の速い本塁打と並んだからだ。

    彼は2023年6月17日に110.1マイル(約177.2km/h)、また同年のナ・リーグ地区シリーズ(NLDS)で110.0マイル(約177.0km/h)の本塁打を記録している。

    今回のスプリングトレーニングで自己最高記録と並ぶ打球速度を叩き出したことは、2025年シーズンのダイヤモンドバックスのスターにとって、非常にポジティブな兆候と言えるだろう。


    4) アンソニー・ボルピー(ヤンキース)
    110.0マイル(約177.0km/h)の本塁打を木曜日に記録

    ボルピーはキャロルと同じ状況にある。ヤンキースの遊撃手は、今週の試合でフィリーズの左腕マット・ストラームから110.0マイルの本塁打を放った。

    これは彼のキャリアにおいて最も速い打球速度を記録した本塁打であり、それだけでなく、メジャーで放った全ての打球の中で最速の打球速度でもある。

    ボルピーのこれまでのキャリア最高打球速度は108.7マイル(約174.9km/h)だったため、今回それを1マイル以上更新したことは、たとえスプリングトレーニングでの出来事とはいえ、大きな意味を持つ。


    5) ブライス・エルドリッジ(ジャイアンツ)
    110.4マイル(約177.6km/h)、450フィート(約137.2m)の本塁打を2月22日に記録

    スプリングトレーニング序盤で大きなインパクトを残したのは、カリアニョーネだけではない。ジャイアンツのNo.1プロスペクトであるエルドリッジも、デビュー戦で450フィートの本塁打を放ち、大きな注目を集めた。

    20歳のスラッガーである一塁手のエルドリッジが見せたこの飛距離は、メジャー級のパワーと言える。

    また、今春450フィート以上の本塁打を放ったのは、エルドリッジ、クリス・ブライアント、エリー・デラクルーズの3人のみであり、トッププロスペクトとしての実力を改めて証明した形となった。

    6) チャンドラー・シンプソン(レイズ)
    スプリント速度:30.8フィート/秒(約9.4m/秒、内野安打時)、29.9フィート/秒(盗塁時)

    今春注目すべきレイズのプロスペクトはチャンドラー・シンプソンだ。「リトル・トニー・グウィン」の愛称を持つ24歳の遊撃手は、現在プロ野球界で最も速い選手の一人かもしれない。

    昨シーズン、シンプソンはマイナーリーグで104盗塁を記録。その圧倒的なスピードはスプリングトレーニングでも健在で、初戦では以下の驚異的なデータが記録された。

    • 内野安打を放った際のホームから一塁到達タイムは4.05秒
    • スプリント速度は30.8フィート/秒(約9.4m/秒)で、これは今春のスプリングトレーニングで記録された最速のスプリント速度と並ぶ数値

    また、同じ試合で盗塁を決めた際も29.9フィート/秒(約9.1m/秒)を記録しており、彼の俊足ぶりをさらに証明した。

    一般的に、30.0フィート/秒以上がMLBの「エリートスピード」の基準とされるため、シンプソンのスピードはMLBトップレベルと言えるだろう。


    7) タリク・スクーバル(タイガース)
    初登板での最速球速:100.1 mph(約161 km/h)

    ここからは投手陣に注目しよう。まずは昨年ア・リーグのサイ・ヤング賞と投手三冠を獲得したタリク・スクーバルだ。彼はスプリングトレーニング初登板から、昨季同様の圧倒的なピッチングを披露した。

    その最も注目すべきポイントは、初登板での最速球速が100.1 mph(約161 km/h)を記録したことだ。スクーバルは昨シーズン、シーズンを通してMLBトップクラスの球速を誇ったが、今年もそのパワーは健在であることを証明した。


    スプリングトレーニングの時点でトリプルディジット(100 mph超え)を記録するのは極めて珍しいため、スクーバルがシーズンに向けて万全な状態にあることが伺える。今季もMLB屈指の剛腕左腕として、リーグを支配する存在になりそうだ。

    8) サンディ・アルカンタラ(マーリンズ)
    平均球速98.9 mph(約159 km/h)、最速100.4 mph(約162 km/h)、奪三振時の球速100.0 mph(約161 km/h)、98.7 mph(約159 km/h)

    2022年のナ・リーグサイ・ヤング賞受賞者が、トミー・ジョン手術から完全復活を果たした。昨シーズンはリハビリに費やしたアルカンタラだが、今春はまさに”本領発揮”。

    ここまで2試合に登板し、4シームとシンカーの平均球速が98.9 mph(約159 km/h)と、スプリングトレーニングにおける全先発投手の中で最速を記録している。また、100.4 mph(約162 km/h)の最速球をマークし、さらに奪三振時にも**100.0 mph(約161 km/h)と98.7 mph(約159 km/h)**を投じるなど、圧倒的なパワーを見せつけた。

    トミー・ジョン手術からの復帰にもかかわらず、すでにここまで球速が戻っているのは驚異的。アルカンタラが再びマーリンズのエースとして君臨する日も、そう遠くなさそうだ。


    9) ダスティン・メイ(ドジャース)
    平均85.1マイル、3384回転、19インチのカーブボール

    トミー・ジョン手術と生命を脅かす食道裂傷からの復帰を目指すダスティン・メイだが、今春の投球を見る限り、そのボールは依然として異次元のエレクトリックさを誇っている。

    特に際立っているのがカーブボール。今春の登板では、

    • 平均85.2 mph(約137 km/h)
    • 回転数3,384 rpm(今春MLB最高)
    • 横方向の変化量19インチ(約48cm、トップ5)

    と、スピン量・変化量・球速のすべてがエリートレベル。

    メイのカーブは2023年に投げていた時よりもさらに変化量が増していることがデータからも明らかになっており、すでにトップクラスのカーブを持つ投手の中でも際立った存在になりつつある。

    本格復帰に向け、ドジャースのローテーションにとっても大きなプラス要素になりそうだ。


    10) ブライス・ミラー(マリナーズ)
    4シーム平均96.8マイル(2024年から+1.6マイル)

    2024年にマリナーズのエリート先発陣の一角として頭角を現したブライス・ミラーだが、2025年はさらに飛躍の年になりそうだ。

    今春の初登板で、ミラーはフォーシームの平均球速を96.8 mph(約156 km/h)まで引き上げた。これは昨シーズンの平均95.2 mph(約153 km/h)から+1.6 mphの向上。

    すでに優秀なホップ成分の強いフォーシームが、さらに速くなったことで、支配力が増すのは間違いない。

    しかも、向上したのはフォーシームだけではなく、全体的な球速が底上げされている。もともと多彩な球種を操るミラーにとって、一段階上のレベルへ進化する準備が整ったと言えるだろう。


    11) ジャック・ライター(レンジャーズ)
    平均98.2マイル/2,411回転の4シーム、17インチ・インダクション・ライズ

    プロ入り後は苦戦が続いたジャック・ライターだが、かつてヴァンダービルト大学時代に見せた支配力を取り戻しつつある。

    今春の登板では、フォーシームの平均球速が98.2 mph(約158 km/h)に達し、昨年のメジャーデビュー時(平均96.4 mph、約155 km/h)から1.8 mph向上している。

    また、回転数は2,411 rpmを記録し、17インチ(約43cm)の「誘導ライジング効果」を生み出している。

    ライターのフォーシームは、ゾーン上部で支配力を発揮する球種だが、この球速アップとライジング成分の向上によって、再び大きな武器になりつつある。

    このまま安定した制球力を身につけることができれば、レンジャーズ先発陣の一角として大きな飛躍を遂げる可能性がある。

    12) コリー・ルイス(ツインズ)
    平均288回転のナックルボール

    この春、メジャーに新たなナックルボーラーが登場した。ツインズの24歳のプロスペクト、コリー・ルイスだ。

    ルイスのナックルボールは驚異的なスピンレート288 rpmで浮かび上がり、今春のスプリングトレーニングで最も低いスピン数の球種を記録した。これは、パドレスのナックルボーラー、マット・ウォルドロンのナックルよりもさらに低い数値だ。

    さらに、ルイスのナックルボールは球速も速い。初のグレープフルーツリーグ登板では平均83.5 mph(約134.4 km/h)、最速84.8 mph(約136.5 km/h)を計測。これは2008年以降のピッチトラッキング時代において、最速のナックルボールとなった。

    そして、その驚異的な変化は結果にも表れている。ルイスのナックルボールは、初登板で63%のスイング&ミス率を記録し、打者を翻弄した。

    ツインズにとって、ナックルボールを投げる投手は珍しく、ルイスの存在はチームに新たな武器をもたらす可能性がある。

    デビッド・アドラー:MLB.com記者
    引用元:mlb.com

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