2025年 輝き出した元トッププロスペクトランク100位以内の10選手

トッププロスペクト タイラー・ソダーストロム アスレチックス MLB

トッププロスペクトからメジャー定着選手への道のりは、必ずしも一直線ではありません。

もちろん、ファンの期待通りすぐにMLBのスター選手となったトッププロスペクトも存在します。フアン・ソト、ポール・スキーンズ、ブライス・ハーパーのような選手たちがその好例です。しかし多くの場合、選手がメジャーの舞台で経験を積み、挫折を乗り越えて本来の実力を発揮するまでには、数年の時間を要します。

2025年シーズンのこれまでのところ、そうした「ステップアップ」を果たした選手たちが複数登場しています。かつてMLBパイプラインのトップ100プロスペクトに名を連ねていた彼らが、今シーズンついに真のメジャーリーガー、あるいはさらに上のレベルに到達しつつあるのです。


ここでは、2024年以前にプロスペクト資格を喪失した選手に限定して、2025年に飛躍を遂げた10人の元有望株を紹介します(ランキングは各選手の最高プレシーズン順位を記載)。そのため、ジェームズ・ウッドやクリスチャン・キャンベルといったごく最近のプロスペクトは対象外となります。

※記載の成績はすべて現地金曜時点のものです。

目次

スペンサー・トーケルソン(タイガース/一塁手)
MLBパイプライン最高順位:2021年シーズン前の第3位

メジャー初年度からの3シーズンで打率.693、fWAR(FanGraphs版勝利貢献度)0.8と苦しんできたトーケルソン。しかし今季ついに、本来の姿が見えてきました。2020年ドラフトで全体1位指名された打者が、いよいよその力を発揮し始めたのです。

開幕から20試合で、打率.288/出塁率.386/長打率.630、本塁打6本という堂々たる成績をマーク。しかもこれは偶然ではなさそうです。予測wOBA(xwOBA)では92パーセンタイル、バレル率(強打の割合)でも87パーセンタイルと、打撃内容の質も極めて高水準。タイガース打線の中軸を担う存在として、ついに花開こうとしています。


マッケンジー・ゴア(ナショナルズ/左投手)
MLBパイプライン最高順位:2020年シーズン前の第5位

ゴアは2023年版の「飛躍選手リスト」にも登場しましたが、今年の進化を見逃すことはできません。例外的に再掲載です。左腕ゴアはここ数年で着実な進歩を見せており、26歳となった今季、ついに本格的なブレイクアウトを迎えているようです。

今季5先発時点で防御率3.41、奪三振45、与四球8。特筆すべきはその内容の良さで、FIP(守備無関係防御率)2.20と、さらに良化する可能性すら示しています。特に土曜日のクアーズ・フィールドでの登板では13奪三振の圧巻の投球を披露しました。

ウッド、ディラン・クルーズ、CJ・エイブラムスと並び、ゴアは「次代のナショナルズの核」として、チーム再建の中心を担う存在となりつつあります。


ケイシー・マイズ(タイガース/右投手)
MLBパイプライン最高順位:2020年シーズン前の第7位

マイズは、近年でも特に注目された投手プロスペクト三本柱の一人(他にタリク・スクーバル、マット・マニング)として知られています。すでにスクーバルはMLB屈指の先発投手として確固たる地位を築いており、マイズも今季ついに、そうしたトップレベルの先発投手へと成長しようとしています。

2018年のドラフト全体1位指名で入団したマイズは、2020〜2024年にかけて度重なる故障や不安定な投球に苦しみました。しかし今季は開幕から3先発時点で防御率2.60、予想防御率(xERA)2.10という素晴らしい数字を記録。その後の土曜日の登板でも、ロイヤルズ打線を7回1失点に抑える快投を披露しました。

奪三振数こそ突出していないものの、これまで課題だった「強打を浴びやすさ」を大きく改善し、より効率的な投球ができるようになっています。タイガース再建の鍵を握る一人として、マイズが本格的に開花し始めています。


シェーン・バズ(レイズ/右投手)
MLBパイプライン最高順位:2022年シーズン前の第12位

シェーン・バズのブレイクを長年待っているように感じるのは、その通りです。バズは2018年以降、4度にわたりMLBパイプラインのトップ100プロスペクトにランクインし、あの有名な大型トレード――クリス・アーチャーがパイレーツへ、タイラー・グラスナウとオースティン・メドウズ、そしてバズがレイズに移籍した取引――の一員でもありました。

トミー・ジョン手術からの復帰を経て、バズはついに完全復活の兆しを見せています。今季開幕から3先発で防御率1.42、19回を投げて27奪三振・4四球という圧巻の成績を記録しました(その後のヤンキース戦では5失点)。

特に最初の3試合では、カーブとチェンジアップが圧倒的で、これらの球種で勝負が決まった38打席中20打席で三振を奪うという“打者手も足も出ず”の投球内容でした。

25歳になったバズは、ついにレイズが期待していた「フロントライン(エース級)先発投手」へと本格的に近づきつつあります。


マックス・マイヤー(マーリンズ/右投手)
MLBパイプライン最高順位:2021年シーズン前の第28位

2020年ドラフト全体3位指名のマイヤーは、メジャーでわずか6イニングを投げたところで2022年8月にトミー・ジョン手術を受け、同年残りと2023年シーズンすべてを欠場しました。

復帰した2024年は、11先発で防御率5.68・期待防御率(xERA)4.74と苦しみましたが、今季はその“リハビリ明けの錆”を完全に振り払い、ついに本来のポテンシャルを発揮し始めています。

ここまでの4先発(24イニング)で防御率2.63・奪三振27を記録し、特に最速90マイル(約145キロ)のスライダーが絶大な威力を発揮しています。このスライダーだけで奪った三振は22個と、単一の球種による奪三振数ではメジャー最多という支配力を誇っています。

マイヤーは、ようやく本格的な“メジャー右腕”としての階段を登り始めたと言えるでしょう。


サル・フレリック(ブリュワーズ/右翼手)
MLBパイプライン最高順位:2023年シーズン前の第30位

フレリックはメジャー初期の頃、「役割をこなせる堅実な外野手」という評価が一般的でしたが、2025年は正真正銘のレギュラーとしての地位を築きつつあります。

現在24歳のフレリックは、今季最初の20試合で打率.319/出塁率.413/長打率.464、fWAR(FanGraphs版WAR)0.7を記録。特に重要な部分での成長が著しく、チェイス率(ボール球へのスイング率)を20.4%に抑え、リーグ89パーセンタイルに、さらに空振り率も12.9%(96パーセンタイル)という優れた数値を誇ります。

今後シーズンを通して長打率.450超えを維持するのは難しいかもしれませんが、彼の優れた選球眼とコンタクト力は本物で、期待打率(xBA)は.293と、今の好調ぶりを裏付けています。

このままいけば、フレリックはブリュワーズにおけるトップオブオーダーの常連として定着する可能性が高いでしょう。


マシュー・リベラトーレ(カージナルス/左投手)
MLBパイプライン最高順位:2021年シーズン前の第37位

長年にわたり、リベラトーレは「ランディ・アロサレーナとのトレードでカージナルスが獲得した選手」として語られることが多く、先発とリリーフ、メジャーと3Aメンフィスを行き来する不安定な時期が続いていました。

しかし今季、25歳の左腕はついに開花の兆しを見せています。4先発で防御率3.60、25回を投げて24奪三振・わずか2四球という驚異的な成績を記録中です(4月20日のメッツ戦を含む)。

リベラトーレは圧倒的な球威で勝負するタイプではないものの、ストライク率は67.5%と非常に安定しており、スライダーは空振り率39%という鋭さを誇ります。また、ゾーン外の球でも打者にスイングさせる「チェイス率」も優秀です。

これまで評価に見合う活躍ができていなかったリベラトーレですが、2025年は安定感と制球力を武器に、先発ローテ定着へのステップを踏み出していると言えるでしょう。


タイラー・ソダーストロム(アスレチックス/一塁手)
MLBパイプライン最高順位:2023年シーズン前の第39位

2023年にメジャー初昇格した際には、45試合で打率.160/出塁率.232/長打率.240と厳しい結果に終わったソダーストロム。しかし、2025年の今シーズンは完全に覚醒しています。

4月19日時点でメジャー単独トップの9本塁打を放っており、「最も早くからブレイクした選手のひとり」と言っていいでしょう。アスレチックスの過去の例で言えば、2023年のブレント・ルーカーやローレンス・バトラーの躍進に続くような、チームを牽引する存在としてソーダーストロムが頭角を現しています。

特に注目すべきは、シーズン最初の17試合で3度のマルチ本塁打試合を記録したこと。これはMLB史上5人目の快挙であり、単なる偶然では片づけられない打撃力を示しています。

さらに、Baseball Savant(ベースボール・サバント)での打球データを見ると、平均打球速度やバレル率などの指標がいずれも「真っ赤」な好成績。これは打撃の質が非常に高く、今の活躍がフロック(まぐれ)ではないことを裏付けています。

2020年のドラフト1巡目指名選手として期待されてきたソダーストロムが、ついにそのポテンシャルを真の「主砲候補」として現実のものにしつつある2025年。アスレチックスにとって明るい未来の象徴となる存在かもしれません。


カーソン・ケリー(カブス/捕手)
MLBパイプライン最高順位:2017年シーズン前の第39位

30歳となった今季、カーソン・ケリーがついに覚醒しています。彼がMLBパイプラインのトップ100に初めて名を連ねたのは8年前、それ以降は主に控え捕手やバックアップ的な役割が多く、過去9年間で4球団を渡り歩きながら通算OPSは.681、WARは5.9にとどまっていました。

ところが2025年の今、ケリーはこれまでとはまったく別の選手のようです。
現在の成績は:

  • 打率:.419
  • 出塁率:.578
  • 長打率:1.097
  • 本塁打:6本
  • WAR:1.4(わずか11試合で!)

さらに、2025年シーズンで最初にサイクルヒットを達成した選手にもなっています。出場試合数こそ少ないものの、驚異の.527 xwOBA(予測加重出塁率)を記録しており、これはアーロン・ジャッジをも上回ってMLB全体トップ。しかも12四球に対して三振はわずか4つという、高い選球眼とコンタクト力も見逃せません。

現在はミゲル・アマヤと出場機会をシェアしている状況ですが、これだけのパフォーマンスを続ければ、正捕手としての出場機会も増えていく可能性は十分にあるでしょう。

ケリーにとっては遅咲きのブレイクながら、まさに「今がキャリアハイ」と呼べる年となっています。彼のような例は、プロスペクトが必ずしも早く開花するとは限らないこと、そして努力と機会次第でいつでも飛躍できることを教えてくれる好例です。


パヴィン・スミス(Dバックス/DH)
MLBパイプライン最高順位:2018年シーズン前の第91位

かつてトップ100にランクインしたパヴィン・スミスは、2023年にわずか60試合の出場ながら打率.270/出塁率.348/長打率.547、9本塁打という好成績を残し、そのポテンシャルを垣間見せました。特に9月のアストロズ戦で放った1試合3本塁打は記憶に新しいところです。

今季2025年は、クリスチャン・ウォーカーやジョク・ピーダーソンのFA離脱に伴い、より多くの出場機会を得たスミスが、その期待にしっかりと応えています。

現在の成績(19試合時点):

  • 打率:.408
  • 出塁率:.500
  • 長打率:.735
  • OPS:1.235
  • 本塁打:複数本(詳細未記載)

一方で、三振率が31%、そしてBABIP(打球運の指標)が.607と、やや運の要素が大きい面も否めません。ただし、バレル率(98パーセンタイル)=22.6%、スイートスポット率(100パーセンタイル)=51.6%というエリート級の打球品質によって、予測加重出塁率(xwOBA)は.408(91パーセンタイル)と非常に優秀です。

つまりスミスは、「運だけではない」ことを証明する打球内容の良さを兼ね備えています。

29歳という年齢ではありますが、今季がまさにブレイクの年となるかもしれません。Dバックスにとって、スミスは予想以上の戦力として、今後のラインナップに欠かせない存在になる可能性が高いです。


ブレント・マグワイアー:MLB.comレポーター
引用元:mlb.com

📝 初心者向けおすすめ記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次