ボルチモア発 — ジャクソン・ホリデイの大きな一打が飛び出す予感は、すでに水曜日の夜から漂っていました。この日はカムデン・ヤーズで「バーク・アット・ザ・パーク(Bark at the Park)」ナイト。スタンドではホリデイの妻クロエさんとともに、1歳の愛犬“ココナッツ”が観戦していました。
ホリデイは犬好きで、マイナーリーグ時代にもこのプロモーションの日に打撃好調だった経験が多く、「楽しい夜だよ。犬が大好きなんだ。うちの家族はたくさん飼ってるからね」と語りました。
ホリデイ夫妻が愛犬ココナッツを迎えたのは2024年春。名前は、オリオールズのスプリングトレーニング地・フロリダ州サラソタにある通りの名前「ココナッツ・アベニュー」にちなんで付けられました。それ以来、ホリデイにとってはまさに“幸運のマスコット”。
今回の観戦でも、背番号7のホリデイ・ジャージを着たココナッツが応援に駆けつけ、最高の“援護”を送ってくれたようです。
Coconut Holliday in uniform https://t.co/mTeDt2F7o3 pic.twitter.com/eLdZicxRrK
— Jake Rill (@JakeDRill) April 17, 2025
観客席で愛犬ココナッツをはじめ多くのワンちゃんたちが見守る中、ジャクソン・ホリデイは2回裏にバルチモアでの自身2本目となる満塁ホームランを放ち、オリオールズの9対1の快勝に大きく貢献しました。これがメジャー74試合目での通算7本塁打目であり、今季2本目の一発でした。
――この一発はやっぱり、ココナッツに捧げるホームラン?
「うん、そのとおり。これはココナッツのためだよ」とホリデイは笑顔で語りました。「チームのためじゃないよ、ココナッツだけ!」
もちろん、チームにとっても価値ある一発でした。今季開幕から6勝10敗と苦戦していたオリオールズにとって、反撃の起爆剤が必要だったからです。特に、その9敗のうちでは4得点以下に終わった試合が9試合もありました。
その流れを断ち切る一撃となったのが、ホリデイのグランドスラム。2回裏、ガーディアンズの右腕ギャビン・ウィリアムズから、左中間へ396フィート(約120.7メートル)、打球速度103.7マイル(約166.8km/h)の豪快な一発を放ち、チームに4点リードをもたらしました。この一打でホリデイは17打席連続無安打のスランプからも脱出。
さらにこの満塁弾で、ホリデイは球団史に名を刻みました。オリオールズの歴史上、最初の7本塁打のうち2本がグランドスラムだったのは、1983年のフリッツィー・コナリー、2001~03年のブライアン・ロバーツに続いて、ホリデイが3人目の快挙となりました。
「センター方向にライナーを打てるようになると、ほんとうに素晴らしいよ」とブランドン・ハイド監督はホリデイの打撃を絶賛。「あれはチームにとって本当に大きな一打だった」と語りました。
エリアス・スポーツ・ビューローによると、ホリデイ(21歳133日)は、球団史上2本目のグランドスラムを放った時点で最年少の選手となりました。これまでの最年少記録は殿堂入り内野手カル・リプケンJr.の22歳323日(1983年7月13日)でした。
そのリプケンは現在オリオールズのオーナーグループの一員でもあり、最近は本拠地試合で本塁後方の最前列に座って観戦することも多く、この日もまさにそこにいたのです。歴史の継承を象徴するようなシーンとなりました。
そして何より、ホリデイの満塁弾の価値を高めたのは「そのタイミング」――チームが勝利を渇望していた場面で放った、まさに起死回生の一発だったことでした。
「リードをもらって投げられるのは文句なしだよ」と語ったのは、今季自身最高の内容となる5回1/3を1失点に抑えた右腕ディーン・クレイマー。ホリデイのグランドスラムで早々に援護点を得て、落ち着いて試合を作ることができました。
序盤の勢いを受けて、オリオールズ打線は終盤にも追加点を重ねました。7回にはラモン・ラウレアーノが移籍後初のホームランを放ち、8回にはライアン・オハーンも2ランを含む4得点の攻撃に貢献。ヘストン・ケアステッドも2点タイムリーを放ち、打線全体で流れをつなぎました。
「グランドスラムが出たあの瞬間は、本当に試合の大きな転機だったね」と語ったのは、6回に見事なスライディングキャッチを見せたヘストン・ケアステッド。「もちろん4点が一気に入るのはチームにとって大きいけど、それ以上に、最近ちょっと苦しんでいた打線の流れを序盤から変えてくれたのが良かった。」
ホリデイとともにこの日のヒーローとなったケアステッドだが、それもそのはず。彼はホリデイの愛犬「ココナッツ」の“友達”でもある。マイナー時代にチームメートとして過ごしていた頃、よくココナッツと一緒に時間を過ごしていたという。
実際、ケアステッドは冗談交じりに「ココナッツはホリデイより僕のことが好きなんじゃない?」と話し、ホリデイは「いや、あいつはサラミ味のご褒美に目がないんだ」と返して笑わせた。
ふざけ合いながらも、ホリデイとケアステッドはオリオールズの打線において重要なピースであることに変わりはない。チームがシーズンを通して浮上していくには、彼らの好調が不可欠だ。
「僕らは、本当にすごいチームになれる兆しをいくつも見せてきたし、打線が噛み合って勢いに乗った時の強さもある。その一方で、苦しんできたのも事実。でも大丈夫、心配はいらないと思う」とホリデイ。「いい当たりも増えてきているし、そのうち結果もついてくるはずだよ」
その“結果”は、水曜の夜にしっかり現れた。オリオールズにとっても、ホリデイにとっても、そしてもちろんココナッツにとっても。
「今日はココナッツにとっても大事な一日だったね」とホリデイは笑顔で語った。
ジェイク・リル:MLB.comオリオールズ担当
引用元:mlb.com