タイガース サヨナラ勝利でニューヒーロー誕生


デトロイト — またしてもハビアー・バイエズのヒーロー劇が期待される場面だった。9回裏、1アウトでサヨナラの走者が三塁に。マウンドにはレッドソックスのクローザー、アロルディス・チャップマン。そしてスタンドからは「ジャービー!ジャービー!」という熱狂的なコールが響き渡っていた。

バイエズはチャップマンの時速100マイルの速球に反応してスイング。――だが、打球は一塁後方へのフライ。バットを放り投げたバイエズの悔しさとは対照的に、スタンドには失望の沈黙が広がった。

代わって仕事をやってのけたのは、ジャスティン=ヘンリー・マロイだった。マロイのサヨナラタイムリーが決まり、二塁上でチームメイトに祝福される中、タイガースは6対5で勝利&3連戦スイープ達成。そしてそれは、チーム全体が掲げる「チームへの献身=バイイン(buy-in)」の最新の象徴でもあった。

タイガースの打線を支えるベテランであり、ワールドシリーズ優勝経験もあるハビアー・バイエズは、ポジション変更や役割の変化、さらには打席でのより慎重なアプローチを受け入れることで、自己犠牲の模範を示してきた。そして、メジャー通算106試合目となるこの日、ベンチから途中出場した25歳のジャスティン=ヘンリー・マロイが、バエズの示す姿勢をしっかりと継承していた。

「球場には“勝ちたい”という空気があるんです」とマロイは語る。
「チーム全体が流れを感じていて、誰もが“何か貢献したい”って思ってる。自分には役割があるとわかってるし、その役割に対してどれだけバイイン(共感・献身)できるかが重要。
それが、自己中心的じゃない、本当にチーム第一の雰囲気を作り出してるんです。
“この試合でどう貢献できるか?”“チームメイトをどう助けられるか?”“どうやって走者を進めるか?”“仲間のために走って、次の打席を楽にさせられるか?”
――そういう発想で野球をしてるんです。うちのチームはその点で本当に素晴らしいことをやってると思います。」

マロイは元ブレーブスの有望株で、現野球部門社長スコット・ハリスがタイガースで最初に行ったトレード補強選手でもある(当時ジョー・ヒメネスとの交換)。
その後、トリプルAトレドで三塁から外野へ転向し、昨夏にはタイガースで一定期間スタメン出場を経験。今季は再びトレドで開幕を迎えたが、外野手の故障により再昇格し、左投手相手の控え選手として出場する立場に落ち着いた。
先週マニュエル・マーゴのリハビリが終了した際も、球団はマーゴではなくマロイをチームに残す選択をした。


このような「控えからの出場で流れを変える役割」は、同じタイガースのアンディ・イバニェスも得意としてきたポジションだ。しかし、イバニェスが32歳のベテランであり、3年間その役割をこなしてきたのに対し、マロイはまだその道を学び始めたばかり。

マロイはこの役割をこなすために、ミゲル・カブレラをはじめとする先輩たちからのアドバイスにも耳を傾けてきた。
「常に体を動かし、試合の流れに集中しておくこと」――それが彼にとっての心得だ。

マロイにとって、この役割は「ルーティンのゲーム」だという。

  • 3回にストレッチを開始
  • 4回からバッティングケージでスイング
  • 6回以降は試合展開や対戦投手とのマッチアップを読み始める

この日も、レッドソックスのブルペンにアロルディス・チャップマンが肩を作っているのを確認すると、マロイは「来るかもしれない対戦」に意識を集中させた。

「ただ、準備しておくことですね」とマロイは語る。
「いざ自分に出番が来たとき、それが大きな場面である可能性が高い。だからこそ、常にその瞬間に備えておく。
今夜はまさにその“瞬間”が来て、ちゃんと準備していたおかげで結果が出た。すごくクールな気分です。」


マロイは現地火曜日の試合で、9回表の先頭打者ケリー・カーペンターの代打としてアロルディス・チャップマンと対戦したが、結果は内野フライ。チャップマンの内角高めの速球攻めに苦しみ、ど真ん中の1球を打ち損ね、もう1球はファウル、最後は内角高めの速球に手を出して凡退した。

そして迎えた現地水曜日の試合、状況を作ったのはアンディ・イバニェスだった。ザック・マキンストリーの代打として出場したイバニェスは先頭で四球を選び出塁。その後、二塁への盗塁に成功すると、捕手カルロス・ナルバエスの送球がセンターにそれて三塁へ進塁。これでサヨナラの走者が三塁に進んだ。

チャップマンはスウィーニーを三振に取り、バイエズを打ち取って二死。ここで打順はアキル・バドゥーの打席、その次がカーペンター。ベンチにはスペンサー・トーケルソンも残っていたが、指名されたのは再びジャスティン=ヘンリー・マロイだった。


「もしトーク(スペンサー・トーケルソン)を代打に出せば、相手は敬遠してカーペンター勝負に切り替えられる」と、A.J.ヒンチ監督は語った。
「こっちもカーペンターに代打を送ることはできるけど、そうなると流れがどんどん後ろにいってしまう。
だから相手がどう出ても、それに対する“カウンター”をこちらも用意していたんだ。」

三塁にはイバニェス――つまりタイガースに必要なのは一本のヒットだけ。選球眼に定評のあるマロイならば、打つべき球は見逃さないと監督は信じていた。

「彼はストライクゾーンを熟知している」とヒンチは断言する。
「結局はそこなんだ。“ゾーンの見極め”がすべて。」

そしてマロイは、初球の外角ぎりぎりの速球を見送り、2球目の内角高めのボール球も冷静にスルー。迎えたカウント2-0、ど真ん中に来たストレートを逃さず捉え、打球は二塁手クリスチャン・キャンベルの頭上を越えてセンターへ抜けるタイムリーヒットに。

前日の試合ではバイエズのヒーローインタビューに水やベビーパウダーを浴びせた張本人だったマロイ。この日は自分自身が祝福の“洗礼”を受ける側になった。

「本当に――純粋な喜びそのものだよ」とマロイは笑顔で語った。

ジェイソン・ベック:MLB.comタイガース担当
引用元:mlb.com

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