選手たちが次々とスプリングトレーニングのキャンプに合流する中、アレックス・ブレグマンの去就は未だ決まっていない。
これは驚きだ!フリーエージェントのブレグマンは現役のゴールドグラブ賞受賞者であり、2016年にアストロズでデビューして以来、MLBで最も生産性の高い三塁手の一人だった。そのため、多くの人が彼がすでにどこかのチームと契約しているものと考えていた。
しかし、ホットストーブリーグ(オフシーズンの移籍市場)はいつも予想外の展開があるものだ。この冬、私たちを驚かせた9つの出来事を振り返ってみよう。
1. フアン・ソトの契約金額
ソトがニューヨーク・メッツに移籍することは、多くの人にとって既定路線と見なされていた。なぜなら、オーナーのスティーブ・コーエンは他球団に入札で負けることはないと考えられていたからだ。しかし、15年総額7億6,500万ドルという契約は、それでもなお衝撃的だった。
ソトは2022年にナショナルズから提示された4億4,000万ドルの契約延長オファーを断っていた。そして、2024年のヤンキースでの活躍を経て、彼がその金額を超える契約を得るのは確実視されていた。FA市場において、彼ほどの選手はいないため、最低でも5億ドル、さらに信頼できるメディアの予測では6億ドル前後の契約になると見られていた。
この時点で、すでにMLB史上最高額の契約となることは明らかだった。というのも、1年前にドジャースと契約した大谷翔平の7億ドル契約は、かなりの金額が後払いとなっているため、現在価値では約4億6,000万ドルと評価されているからだ。
しかし、ソトは(歴史的に偉大な打者でありながら、長期的には守備面で大きな価値をもたらすとは考えにくい選手にも関わらず)二刀流の大谷翔平の契約額を上回る契約を獲得した…しかも1ドルも後払いなしで!
この契約にはインセンティブが含まれており、総額が8億ドルを超える可能性もある。さらに、ソトは本拠地の試合で専用スイートルームを利用できる権利も手にしており、これはヤンキースが提供を拒否した特典だった。
このオフシーズンの「勝者リスト」には、間違いなくソトの名前が入るべきだ。それ以外の選手は、ただ「7億6,500万ドル以下の枠」を争っていただけに過ぎない。
2. コービン・バーンズのダイヤモンドバックス移籍
ダイヤモンドバックスは、先発投手陣が比較的充実している数少ないチームの一つと見られており、バーンズのFA市場での動向ともほとんど結びついていなかった。
しかし、クリスマスの頃、アリゾナ州スコッツデール在住のバーンズが「Dバックスで投げたい」とひそかに球団側に接触。そこから話が一気に進み、このオフ最大のサプライズ契約の一つが実現した。
さらに驚きだったのは、ダイヤモンドバックスは昨年ジョーダン・モンゴメリーと大型契約を結んだばかりで、オーナーのケン・ケンドリックがその契約について公の場で不満を漏らしていたことだ。にもかかわらず、その同じ球団が30歳のバーンズと6年2億1000万ドルの契約を結んだことは、多くの人々を驚かせた。
また、オフの間ずっとモンゴメリーのトレードは既定路線と見られていたが、ダイヤモンドバックスは今のところ彼を放出していない。その結果、スプリングトレーニングを迎える段階で、彼らのローテーションは飽和状態になっている。
3. アスレチックスが今オフの“意外な”大盤振る舞い
現在、マイナーリーグの本拠地であるサクラメントで試合を行うことになっているアスレチックスだが、今オフの間、代理人たちに対して「積極的に補強資金を投入する意思がある」と伝えていた。しかし、フリーエージェント(FA)補強、自軍選手への投資、国際市場での獲得を含めると、今オフの支出額でトップ10に入る球団になると予想した人はほとんどいなかっただろう。
アスレチックスは、ローテーションの柱としてルイス・セベリーノを獲得。2年契約(3年目のプレイヤーオプション付き)で最大6700万ドルに達するこの契約は、球団史上最大の契約となった。さらに、三塁手ジオ・ウルシェラ、救援投手ホセ・ルクレルをFAで獲得し、左腕T.J.マクファーランドと再契約。また、レイズとのトレードで左腕ジェフリー・スプリングスを補強した。加えて、指名打者ブレント・ルッカーと5年6000万ドルの契約延長にも成功。
国際市場でも動きを見せ、日本の二刀流アマチュア選手・森井翔太郎と契約。彼の契約金150万ドルは、NPBを経由しない日本人アマチュア選手としては史上最高額となった。
このように、アスレチックスは今オフに1億5000万ドル以上の投資を行った。
4. エンゼルスの積極的な動き
2014年、当時23歳で初のMVPを獲得したマイク・トラウトを擁するエンゼルスは、アメリカン・リーグ地区シリーズ(ALDS)でロイヤルズにスイープ(3連敗)された。その後のエンゼルスは、大谷翔平の加入と退団、期待外れの補強(特にアンソニー・レンドン)、3人の異なるGM、5人の異なる監督を経験し、勝率.500を超えたシーズンはわずか1回のみという低迷が続いた。特に、トラウトは度重なる怪我の影響で2021年以降わずか266試合しか出場できていない。さらに、2024年の数少ない希望だった若手遊撃手ザック・ネトもオフシーズンに肩の手術を受けることになった。
こうした状況にもかかわらず、エンゼルスは今オフに驚くべき補強を行い、戦力を強化することを選んだ。主砲ホルヘ・ソレアーと内野手スコット・キンガリーをトレードで獲得し、さらにFA市場では左腕菊池雄星と3年6300万ドルの大型契約を結ぶという意外な動きも見せた。加えて、捕手トラビス・ダーノー、先発右腕カイル・ヘンドリックス、クローザーのケンリー・ジャンセン(情報筋によると)、内野手ヨアン・モンカダとケビン・ニューマンも補強。さらに、マイナー契約ながらティム・アンダーソンとJ.D.デービスとも契約を結んだ。
昨シーズン、エンゼルスは勝率.500を36ゲームも下回る成績に終わった。ア・リーグ西地区の王者アストロズが以前ほどの強さを維持できない可能性があるとはいえ、同地区には2023年のワールドシリーズ王者レンジャーズ、戦力を整えたマリナーズ、そして今季の優勝を狙うアスレチックスが存在する。エンゼルスがこの差を埋めるのは決して簡単ではない。
しかし、今オフの積極的な補強を経て、エンゼルスは2024年のロイヤルズのように、大きく順位を上げることを目指す。
5. カージナルスはまだ本格的な動きを見せていない
今オフ、カージナルスは2年連続でポストシーズン進出を逃したことを受け、大幅なチーム改革を行うと考えられていた。その方針としては、年俸総額を削減し、若返りを図ることが挙げられていた。こうした方針から、大物FA選手の獲得には積極的ではないと予想されていたが、それでもオフシーズンのトレード市場ではもっと活発な動きを見せると考えられていた。
いや、言い方を変えよう。カージナルスはオフシーズンの“成立した”トレード市場でより積極的な動きを見せると思われていた。実際のところ、スター三塁手ノーラン・アレナドのトレード交渉には積極的だった。しかし、アレナド自身がトレード拒否権を行使し、アストロズへの移籍を阻止したことで交渉は頓挫してしまった。また、ベテランのソニー・グレイとウィルソン・コントレラスもトレード拒否権を持っており、チームとしては動きが取りづらい状況にある。それでも、アレナドのトレード交渉を成立させる方法はあるはずだ。
さらに言えば、本格的なチーム再編を考えるのであれば、先発投手エリック・フェッデやオールスタークローザーのライアン・ヘルズリーを放出する動きがあってもおかしくない。
現時点でカージナルスが今オフに行った主な動きといえば、ポール・ゴールドシュミットとアンドリュー・キトリッジをFAで放出したことくらいだ。しかし、この状況はいつ変わってもおかしくない。
6. クレイ・ホルムズが先発投手として契約
2024年はヤンキースで不安定なシーズンを過ごしたものの、ホルムズはFA前年にオールスターに選出された実績のあるリリーフ投手であり、かつてはリーグ屈指の強力なリリーバーの1人と見なされていた。また、ポストシーズンでは好投を見せており、その印象が関係者の記憶に強く残っていた。そのため、32歳となるFA市場では、リリーフ投手の中でも上位の評価を受けるだろうと予想されていた。
しかし、ホルムズは3年契約の1年目をメッツで迎え、フルタイムの先発投手として定着を目指すこととなった。
多くのMLBリリーフ投手と同様に、ホルムズもマイナー時代は先発投手だった。彼は2018年にパイレーツでMLBデビューを果たし、先発として15イニングを投げたものの、防御率7.80という厳しい成績に終わった。しかし今、キャリアの中盤に差し掛かるホルムズには、先発として再挑戦するチャンスが巡ってきた。メッツはこの契約が先発ローテーションの穴を埋める創造的な解決策になることを期待している。
7. ガーディアンズがアンドレス・ヒメネスをトレード
リーグ優勝決定シリーズ(LCS)に進出したチームが、右側の内野を丸ごと放出することは滅多にない。しかし、ア・リーグ中地区王者のガーディアンズは、ファーストのジョシュ・ネイラーをダイヤモンドバックスへ、そしてセカンドのアンドレス・ヒメネスをブルージェイズへ放出するという大胆な決断を下した。
ネイラーのトレードは、そこまで驚くべきことではなかった。彼はオールスター選出のシーズンを送っていたものの、球団は、年俸調停期間に入り年俸が上昇しつつある選手を積極的にトレードに出すことで知られている。その代役として、かつてチームに在籍していたカルロス・サンタナを獲得し、さらに若手のカイル・マンザードもファーストのオプションとして控えている。
しかし、ヒメネスのトレードは意外だった。彼はゴールドグラブ賞を受賞するほどの守備力を誇り、守備を重視するガーディアンズにとって不可欠な選手だった。さらに、球団は彼と2030年までの長期契約を結んでいた。
問題は、ヒメネスの打撃成績が、上昇する年俸に見合うものではなかったことだ。予算の限られたチームにとっては負担となるため、ブルージェイズとの3チーム間トレードの一環として放出されることになった。その見返りとして、先発投手候補のルイス・オルティスを獲得したが、セカンドのポジションが空席となるという新たな課題が生まれた。
8. テリー・フランコーナがレッズの監督に就任
数え切れないほどの手術を受け、満身創痍だったフランコーナは、2023年シーズン終了後に「引退」し、クリーブランドでの11シーズンに及ぶキャリアに幕を下ろした。彼の実績は殿堂入りに値するものと考えられ、リーグ全体からの称賛や記念Tシャツとともに送り出された。
フランコーナは、親しい友人たちに「いつかまた監督をやることもあるかもしれない」と話してはいたものの、その時点では自身の体調が万全でなく、監督業を全うする自信がないと語っていた。
ところが、たった1年の休養とレッズからの思いがけない電話が、彼の気持ちを変えた。
レッズは、伝説的な元実況アナウンサーのマーティ・ブレナマンを通じてフランコーナに接触し、監督業への関心を探った。その後、ゼネラルマネージャーのニック・クラルがアリゾナの自宅を訪問し、話し合いを進めた結果、いつの間にか65歳のフランコーナは再びユニフォームを着ることになった。
まあ、「引退」は永遠に続かなければならない、なんて決まりはないのだから。
9. アストロズがカイル・タッカーをトレード
このトレードが最終的にカブスとの間で成立した時点では、それほど驚くことではなかった。なぜなら、ゼネラルマネージャーのダナ・ブラウンが示唆し、噂として広まっていたからだ。
しかし、オフシーズン当初はタッカーがトレード候補になるとは誰も予想していなかった。
アストロズは長期契約を慎重に検討するチームであり、タッカーは28歳のFA間近の選手ではあった。しかし、アストロズはこれまでジョージ・スプリンガーやカルロス・コレアを契約最終年まで保持し、優勝を狙う戦略をとってきた。それに加えて、タッカーはチーム内で最も総合力の高い選手だった。
しかし、このトレードによってアストロズのファームシステムは強化された。
見返りとして三塁手のプロスペクトであるキャム・スミスを獲得し、さらにアイザック・パレデスも加わったことで、ブレグマンの退団を見越した補強になった。
とはいえ、アストロズがこのような動きを見せたのは非常に異例のことだった。
アンソニー・カストロヴィンス:MLB.com記者
引用元:mlb.com