ゲレーロJr.との合意でメジャーリーグ全体に及ぼす5つの影響とは!?

ブルージェイズ ウラディミール・ゲレーロJr. MLB

ブルージェイズファンがずっと待ち望み、時には「もう叶わないのでは」と絶望すら感じていたニュースが、ついに日曜深夜から月曜未明にかけて飛び込んできた――ウラジミール・ゲレーロJr.がカナダに残る。長らく双方の間で進展が見られなかった契約交渉の末、ブルージェイズはゲレーロと14年総額5億ドルの契約に合意。これにより、彼はキャリアの大半(あるいは全て)をトロントで過ごすことが確実となった。


この超大型契約は、ブルージェイズのみならずメジャーリーグ全体に広範囲な影響を及ぼす。ここでは、今季最大級のニュースとなったこの契約から得られる5つの即時的なポイントを見ていこう。

目次

1. トロントに「再建」の二文字はない

パンデミック直前のブルージェイズは、今後10年間にわたる持続的な成功を見据えたチームとして高い期待を集めていた。ゲレーロとボー・ビシェットという才能豊かな若手が2019年にメジャー昇格を果たし、すぐに結果も出した。資金面でも余裕があり、ファン層も全メジャー球団の中でも屈指の熱狂ぶりと広がりを誇っていた。

しかし、その後の展開は期待通りとは言い難い。決して「失敗」とは言わないまでも、当初描いていた青写真通りには進まなかったのが実情だ。

新型コロナウイルスの影響により、ブルージェイズは2020年の短縮シーズン開始から2021年7月下旬まで、本拠地ロジャース・センターで1試合もプレーできなかった。その間、「ホームゲーム」はマイナー施設のバッファローやスプリングトレーニング施設のフロリダで行われた。さらに、ポストシーズンでは敗退が続き(2016年以降プレーオフでの勝利はゼロ)、ファンの不安も募っていた。

ゲレーロJr.は2021年にMVP級の活躍を見せブレイクしたものの、その後はやや成績が落ち着き、契約延長の条件を巡って明確な方向性を見出すのが難しい時期が続いた。その結果、チーム全体の若返り路線も空回りしているように見え、昨年7月にはゲレーロとビシェットの両名がトレード候補として名前が挙がる事態に。プレーオフで1勝も挙げることなく主力2人と別れることになるのか――再建は避けられないのか――という暗い見通しが立ち込めていた。

しかし、今回の契約延長により、ブルージェイズファンはもはやその懸念を抱く必要はない。今後14年間、ゲレーロJr.がこのチームにいる限り、球団には常に「勝つ理由」が存在する。もし彼が去っていたら、トロントは再び暗黒時代に突入していたかもしれない。だが今はまったく違う未来が見えている。

2. ゲレーロJr.は「史上最高のブルージェイズ」になれるか?

Baseball-ReferenceによるWAR(Wins Above Replacement/勝利貢献度)で見ると、26歳のゲレーロJr.はすでにブルージェイズ史上16位(21.6)にランクインしている。今季終了時には、ロベルト・アロマー、デボン・ホワイト、ジョン・オルルッド、エドウィン・エンカーナシオン、ジム・クランシー、ロイド・モーズビーといった懐かしの名選手たちを抜き、トップ10入りする可能性が高い。

そして、彼にはさらに14シーズンが残されており、球団史上1位(56.8)のデイブ・スティーブに近づくチャンスが十分にある。

これまでブルージェイズのユニフォームを着た殿堂入り選手は何人かいるが、ゲレーロよりWAR上位にいる選手ではロベルト・アロマーとロイ・ハラデイの2人が該当する。ただし、アロマーが殿堂入りした際のチームとしてブルージェイズを選んだのは彼だけであり、そのアロマーですらトロントでの在籍はわずか5シーズンだった。

つまり、ブルージェイズはこれまで「キャリア全体をブルージェイズで過ごし、その実績でクーパーズタウン(野球殿堂)入りする」という真の意味でのフランチャイズ・アイコンを持ったことがない。今回の契約延長によって、ゲレーロJr.はその「初の存在」となる可能性を手に入れた。

3. ドジャースが「全員獲得する」わけではない

近年のオフシーズン、特に直近のものでは、「ドジャースは欲しい選手をすべて棚から選ぶかのように獲得できる」という印象を抱くファンも多かった。しかし、今回のゲレーロJr.との超大型契約は、FA市場に出る前にスター選手が他球団に留まるという流れの最新例でもある。しかも契約を結んだのは、通常、FA市場での大盤振る舞いで知られる球団ではないブルージェイズだ。

現在のMLBには、「生え抜きスターを長期契約で囲い込む」というトレンドが広がっており、多くのスター選手たちがすでに10年以上の契約で所属球団に縛られている。オプションの行使次第ではあるが、以下のような状況だ:

  • ロナルド・アクーニャJr.:2028年までブレーブス
  • コービン・キャロル:2031年までダイヤモンドバックス
  • フリオ・ロドリゲス:2034年までマリナーズ
  • ボビー・ウィットJr.:2037年までロイヤルズ
  • そして今回のウラジミール・ゲレーロJr.:2039年までブルージェイズ

つまり、「ドジャースやメッツのような金満球団が、常に欲しい選手を自由に獲得できる」という考えは現実とは少し異なる。ゲレーロの契約は、それを改めて示す材料となった。


4. ヤンキースはいまだに「長期的な一塁手」を必要としている

ウラジミール・ゲレーロJr.がトロントを離れる可能性が取り沙汰されていた中で、ブルージェイズファンにとって最も恐ろしいシナリオの一つが、「彼がオフシーズンにヤンキースと契約する」というものだった。それはヤンキースにとっては理にかなった動きでもあった。というのも、彼らはフアン・ソトを残留させられず、アーロン・ジャッジのパートナーとなる新たなスター選手を求めているからだ。

実際、ヤンキースは一塁に明確な空きがある。現在はポール・ゴールドシュミットと1年契約を結んだものの、それはあくまで「つなぎ」であり、長期的な解決策ではない。

これまで何年にもわたり「ヤンキースではプレーしない」と公言してきたゲレーロJr.も、昨年はやや発言を軟化させ、可能性を完全には否定しなかった。しかし、今回の契約によってその扉は完全に閉ざされた。

では、次にジャッジの“相棒”になるべきスターは誰なのか?

ゲレーロJr.に使うはずだった巨額の資金を、ヤンキースは誰に向けるのか?――その問いは、今後のオフシーズンで最も注目すべきテーマのひとつとなりそうだ。


5. カイル・タッカーは“うれしい立場”にいる

…さて、ヤンキースが次に狙うべき相手がここにいるかもしれない。外野の再編成が必要になるだろうが(いっそ将来的にジャッジを一塁にコンバートしてみては?)、ヤンキースが本気でタッカーを狙うかはさておき、このオフシーズンの目玉FA選手がカイル・タッカーであることは間違いない。

すでにフアン・ソト(15年7億6,500万ドル)とウラジミール・ゲレーロJr.(14年5億ドル)という巨大契約が続いており、タッカーもそれに匹敵する大型契約を得る可能性が高まっている。

特に今回のゲレーロJr.の契約は、タッカーにとって“基準”となる契約だろう。年齢はタッカーの方が2歳上だが、守備位置の重要性、守備力・走塁面での貢献を考えると、トータルの価値では勝ると見る球団も多い。

しかもタッカーは現在、移籍先のカブスで絶好調のスタートを切っている。これにより、この冬のFA市場で“スターを渇望する球団たち”の筆頭ターゲットとなる可能性が一気に高まった。

引用元:mlb.com

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