ブラディミール・ゲレーロJr.がブルージェイズとの契約延長を正式に結んだ瞬間から、カイル・タッカーのFA（フリーエージェント）へのカウントダウンが始まりました。タッカーは、今年のFA市場で間違いなく「最大の目玉選手」となるでしょう。
もしゲレーロが14年5億ドルの契約でキャリア全体をトロントで過ごす決断をしていなければ、その称号は彼のものだったかもしれません。
では、タッカーがFAになる前に、カブスと契約延長を結ぶ可能性はあるのでしょうか？その可能性は「ゼロではありません」が、現時点では不透明です。
アンケートに答えた多くの球団幹部は、カイル・タッカーがシーズン中に契約延長を結ぶ可能性は極めて低いと見ているようです。
あるナショナル・リーグの幹部はこう語っています。
「彼は今オフのFA市場で、他の選手と大きな差をつけて“最高の選手”になる可能性が高い。彼のような選手が、複数球団による入札合戦のチャンスを自ら手放すとは考えにくい。」
一方、アメリカン・リーグの幹部もシーズン中の延長に懐疑的で、ブラディミール・ゲレーロJr.の契約（14年5億ドル）が、もしFA前に契約が成立するなら「最低ライン（フロア）」になるだろうと指摘しています。タッカーは1月で28歳になったのに対し、ゲレーロは3月で26歳になったばかりであり、年齢差もある中での見解です。
「我々が今議論しているのは、WAR（勝利貢献度）でゲレーロに匹敵し、より安定した攻撃力を持つ左打者についてだ」と、そのAL幹部は語っています。
カイル・タッカーは2021年から2023年までの3年間で、平均30本塁打、104打点、23盗塁、OPS.870、bWAR（Baseball-Reference版WAR）5.4、出場試合数149試合という安定した成績を残してきました。昨年は右足すねに自打球を受けて骨折し、3か月間戦線離脱しましたが、それでも78試合の出場で23本塁打、49打点、11盗塁、OPS.993、bWAR4.7を記録しています。
一方で、ブラディミール・ゲレーロJr.は2021年から2024年の4年間で、平均34本塁打、101打点、OPS.887、bWAR4.6、出場試合数159試合という実績を残しています。
昨年12月、タッカーはヒューストン・アストロズからシカゴ・カブスへトレードされました。その見返りとしてカブスは、MLB全体55位のプロスペクトである三塁手キャム・スミス、内野手アイザック・パレデス、投手ヘイデン・ウェスネスキーをアストロズに放出し、タッカーの“1年間の確実な契約期間”を獲得しました。
あるナショナル・リーグの幹部はこのように語っています。
「もしカブスがタッカーとの契約延長に失敗すれば、これは“歴代でも最悪級のトレード”として語り継がれるかもしれない。」
タッカーが他球団と交渉可能になる前に、カブスが契約延長を目指すのは当然の戦略と言えるでしょう。しかし、彼がFAまでの距離が非常に近いこと、そして加入からまだ5か月も経っていないことを踏まえると、シーズン中に合意を得るのは難しい交渉になる可能性があります。
「彼がシカゴに残りたいなら、冬にいつでもサインできる」と、あるナショナル・リーグの幹部は語っています。「それ以前に延長契約に合意させるには、FA市場に出るチャンスを諦めさせるほどの“大幅な上乗せ”が必要だろう。彼はブラディミール・ゲレーロJr.よりも2歳年上で、ゲレーロのように球団や国と深い絆があるわけでもない。だから、カブスがシーズン中にそこまで出すとは思えない。」
一部報道では、タッカーとカブスがシーズン中に契約延長の話し合いを行っているともされていますが、多くの球界関係者は、最終的には彼がフリーエージェントに進むと見ています。ただし、2人の幹部は「カブスが本気で払う気になれば、契約延長は可能だ」とも述べています。もちろん、非常に高額な契約が必要となるのは間違いありません。
「もし実際に話し合いが進んでいるのなら、双方に前向きな意思があるということだ」と、別のナ・リーグ幹部は述べています。「カブスはプレーするには素晴らしい場所だし、彼らがタッカーを引き留めたいと思っているのは確かだろう。だからこそ、彼をトレードで獲得したんだ。可能性は十分あると思うよ。」
ア・リーグの別の幹部は、「彼はそれができる球団にいるわけだから、延長契約はあると思う」と述べ、さらに「タッカーはゲレーロの契約（14年5億ドル）を“平均年俸”の面では上回る可能性がある」と指摘しました。
また、他のナ・リーグ幹部は「シーズン中に契約するかどうかは予測できないが、ただ一つ確かなのは、タッカーはゲレーロの契約を見て喜んだに違いない」とコメントしています。
マーク・ファインサンド：MLB.comレポーター
引用元：mlb.com
