フロリダ州ダニーデン発 — フィリーズのトレイ・ターナーは、試合前のストレッチ中にある賭けを持ちかけられた。「マックス・シャーザーの初球をチャレンジする度胸はあるか?」──それはフィリーズの二塁手、ブライソン・ストットの言葉だったかもしれない。
「それはいいアイデアだ。やってみよう」とターナーは答えた。
賭け、成立。
「誰も本当に俺がやるとは思ってなかった」とターナーは笑った。「だから『なんでダメなんだ? 別に気にしないよ』って言ったんだ」
シャーザーは先週、メジャーリーグで試験的に導入されている「ABS(自動ボール・ストライク判定)チャレンジシステム」について問われた際、「人間が審判をやればいいじゃないか?」とコメントしていた。
ターナーはそのコメントを読んでおり、かつてナショナルズで共にプレーしたシャーザーをからかおうと決めていた。
「ど真ん中に来てほしかったんだけどね」とターナー。
実際の投球は完全なストライクではなかったが、明らかにストライクゾーンに入っていた。それでもターナーはヘルメットの上をタップし、チャレンジを宣言した。
最初、シャーザーは困惑した表情を見せた。
「最初は俺がチャレンジしたことに気づいていなかったと思う」とターナーは振り返る。「でも、その後は二人で笑ってたよ。レギュラーシーズンだったら、彼は本気で怒っていたかもしれないけど、今回はちょっと演技してたね。でも俺は分かってた。彼の目が回るのを見たかったんだ。それが目的だった」
もちろん、ターナーはチャレンジに敗れた。
「ちょっとした舞台裏の楽しみってやつさ」とシャーザーは笑う。「トレイと俺は親友だから、こういうことで笑い合えるんだ」
「みんな俺をからかってるんだよ」とシャーザー。「舞台裏ではいろいろあったんだ。こんな対戦、真剣にはできないよ。相手は昔からの友人たちだし、俺にとってトレイは今までで一番好きなチームメイトの一人だからね」
フィリーズのロブ・トムソン監督は、このジョークをあまり好ましく思っていなかった。彼はキャンプが始まった際、「チーム入りを争っている選手たちは、ボール・ストライクの判定にチャレンジすべきだ」と伝えていた。なぜなら、たった1回の打席や1球が、チームに残れるかどうかを左右する可能性があるからだ。
「フロントオフィスにアピールしようとしている選手や、このキャンプに初めて参加する選手、そしてロースター入りを目指している選手たちがいる。我々にはまだ数枠の空きがあるんだ……」とトムソン監督は語った。
なお、ターナーはこの打席で二塁へのフライを打ち上げ、アウトになった。彼がジョギングしながらマウンドを通り過ぎる際、シャーザーと数言交わす場面もあった。
「彼とは別のことについて話してたよ。チャレンジのことじゃなかった」とターナーは語った。
一方で、シャーザー自身も試合前にちょっとした“いたずら”を仕掛けていた。彼はブルージェイズ側に、ブライソン・ストットの打席で流れるウォークアップソング『A-OK』を、自分の打席で流すようリクエストしていたのだ。
実は、ストットはシャーザー相手に通算13打数8安打(2塁打1本)と、かなりの好成績を残している。
「そうだね、俺はシャーザー相手に結構打ってるから、彼は俺をいい気分にさせたかったんだろうね」とストットは笑った。
キーガン・マシソン:MLB.comブルージェイズ担当
トッド・ゾレッキ:MLB.comフィリーズ担当
引用元:mlb.com